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眠い日

作者: 深月 良介

 短編小説です。

 どうしても眠い彼女の物語です。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ――ある日の朝


(眠い……)


 とある少女は眠たがっていた。


 その少女はAと呼ばれていた。

 今は八月中旬でまだ夏休みは二週間もあるという状況であった。

 しかし、Aは眠そうにしている。

 本来ならばベットの上で惰眠を謳歌しても良い時期であったが……。


「こーら、A! もう起きなさいってば!」


「むにゃむにゃ」


「起きなさい!」


「ふえっ!?」


 Aは歩きながらうっすら眠りの世界に入っていたが今ので完全に現実世界に戻された。

 起こしてきたのはBという少女だった。

 Aはその金髪の髪を掻きながら目を開け、Bに向かい合った。


「あっ! まだ髪整え出なかったの?」


「いやぁ……別にいいでしょAよ」


「ダメよ! 髪を整えるのは乙女の常識なんだから!」


「私はその常識の押し付けバーゲンセールはあまり……好きじゃないんだけど」


「あんたは単に面倒くさがりなだけでしょ!」


「うっ……バレたか」


 ド肝を抜かれたような反応を示したA。

 BはAの後ろに回りそのくしゃくしゃの髪の毛をどこからか持参して来たクシでとかした。


「うん! 髪の毛はこんなんで大丈夫でしょ! あとは髪型だね。 A、どんな髪型にする?」


「いやぁ、別にいいよどれでも」


「ダーメ。 あんたはまた放置するでしょう」


「なんでお姉ちゃん気質なんだ!?」


「あんたはまたからかう。 その労力を他に使ったらどうなの?」


 そうこうしているAはツインテールという美少女のみに許された髪型にされた。


「はっ! これは……ツインテール……だと……!?」


「なにか悪いかしら?」


「ツインテールは本来ツンデレがやるべきと相場が決まってるじゃないか!?」


「あんた……それ偏見よ……」


「だって普通はBがツンデレキャラに当てはまるはずだ!」


 AはBを指差しそう言った。

 Aは動揺を隠せない様子だった。


「だってBは……」


 そしてAはあまりの現実の不条理を言葉にする。


「髪が短いから出来ない……だと!?」


「何よ、たかが髪型でしょ。 ほら行くわよ!」


「ねぇねぇ、BさんBさん」


「なによ?」


 Bは気だるそうにAの答えを聞こうとする。


「私これから用事が……」


「ダメよ」


 Aが言うと同時にBはその言葉を遮るように否定した。


「ひどいよ! ご慈悲を、ご慈悲をー!」


 Aは出来れば布団に入って寝たいがために必死に懇願する。

 だが馬に念仏らしくその願いは明後日の方向に消え去った。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ここには人が沢山入り乱れていた。

 頭が良さそうな人からバカそうな人、何考えているか分からなさそうな人もいる。



 ――そう、ここは塾である。



 事の発端はAが勉強嫌いなせいであった。

 言ってしまえばBの完全な心配性ゆえにAを連れてきたのであった。


「んん……やっぱ慣れん」


「あんたって塾行った事あるんだっけ?」


「いやいや……こんな半強制的に縛り付ける場所には例えお金チラつかされても絶対……行かないはずだったのに!」


 Aは声は小さいかったが心の叫びはこの部屋中に響いた。


「でもあんた、一学期の成績悪かったじゃない」


「うぐ……。 だがねBさんや、人を無理矢理連れていくのはあまり宜しくないかと……」


「はいはい、ツベコベ言ってないで行くわよ。 ちなみに拒否権は無いからね」


「うへぇ……鬼畜だぁぁぁぁ!」


 Aは駄々をこねる子供の様な声を出しながら塾の教室に連行された。



 最初の授業は英語であった。

 ちなみにAは英語と数学が特に嫌いであるため、こんなのが何のために役立つんだと最初は悪態をつきながら授業を受けた。

だがそれは授業が難しくなるにつれそんな事は言えなくなってしまった。


(あかん……何言っているだ?)


 教室は白を基調とした部屋で先生がホワイトボードで板書を書いているという感じであった。

 ちなみにその教鞭をうっている先生は少々頭の辺りが寂しく明らかに頭が固い頑固オヤジの顔であった。


(ちくしょう……学校の先生だったらタメ口で話せるのにあの先生……なんか言った瞬間にすぐ怒りだしそうな顔してそうだからなぁ)


 ちらっとAはBの方を見る。

 Bもかなり悩んでいる様子だった。

 あれは声をかけずらいなと心の中で思いながら、これからどうするかと打開策を考えようとした。


「あの……大丈夫ですか?」


 突如Aの隣から声が聞こえた。

 Aは隣へ振り向くと気弱そうな少女がいた。


「あの……えと……何ですかね?」


 Aはどういう事なのかを恐る恐るその少女に聞いた。


「いや……分からなさそうにしていたので……大丈夫かなと声をおかけ致しました……」


 おお、これはと内心でガッツポーズをとりながら喜んだ。

 それはこの眠たい中、まともに勉強できない中でそれを切り抜けさせてくれる存在に出会ったからであった。


「じゃあアドバイスとかお願いしますわー!」


「あ……はい」


 Aは気さくに話しかけて、その少女はきちんと応じてくれて、これで安泰だと再び喜んだ。

 そして、Aは再びその少女を見た。

 A視点での評価はおっとりしていてこれは文学少女か……いや、意外とやる時はやるみたいなタイプっぽそうかもと予想した。


 その少女の名前はCであった。

 その後はAはCにアドバイスされながら何とか最初の授業を乗り越えた。



 その後AはCという少女に話しかけた。


「いやー、助かったわ。 あーりがとう!」


 Aはテンションが高めでお礼をした。

 Cの方はおろおろしながらもはっきりとした声で言った。


「だ、大丈夫だよ」


「ところで君の名前は?」


「あ、私はCって言うの」


「へぇー。 君はこの塾生?」


「は、はい」


 マジかとAは驚きながら話していると誰かが近ずいて来た。


「あら、あんたらいつの間にか仲良くなってたのね」


「おやぁ、これはこれはさっきの授業中にあまりに分からないものだから大声出して『分からないわよ!』と言っていたBじゃないか」


 Aはからかう態度で若干似ているBの物真似をしてからかった。


「う、うるさいわね。 あんただって同じ様な状況だったでしょ!」


 Bにとってはあの大声をあげた事は恥ずかしかったらしい。

 現在は一時間目が終わり、休み時間だ。

 辺りは人で溢れており、スマホを操作する者や、友達とペチャクチャ話すといった者がいるので数箇所に人が集まり、その地帯は人口密度が高かった。

 とりあえずAはBとCともう一度どういう事かを話そうとまた口を開いた。


「ところでB。 あんたらって言ってたけどCの事は知ってるの?」


「そうよ、私と塾で同じクラスだけど」


「ああ……えと、Bさんとは一年前から同じクラスなので、席も隣ですので、お友達です」


 ふーんと言いながらAはこの後どうするかについてを考えた。

 まだ眠気は取れずまぶたが重いせいで目に入る情報が少なく、情報をキャッチしなくてもいいのかと判断した体がさらに眠気を増させるせいで負のスパイラルにハマってしまった。


 ――キーンコーンカーンコーン


 その時に授業の開始を告げる音色が耳の中で響いた。

 教材を持った先生がズタズタと教室に近ずいて来る。


「あ、やば、先行くわね」


 Bは急いだ様子で席に戻った。


「あの……Aさん。 私達ももう行きませんか?」


 ぼーっと考え事をしていたAにその声ではっとしたのか、やっと反応を示した。


「あ、うむ。 早く行こう」


 若干変な言葉が出たがそれはどうでもいいと切り捨てて悪者がヒーローから逃げるよにスタコラサッサという様な感じで席に向かった。



 二時間目は数学であった。

 ちなみにAはかなり嫌いだ。

 こんな物いつ使うんだよと思いながらぼんやりと授業を聞いた。


(まぁ、こっちはなんか気弱そうな先生だから問題ないし、図形系統じゃないから公式当てはめれば終わるっしょ)


 そんな余裕をこいていたAだったが早くも絶望に追い詰められる。

 文章題だとっ!と驚きを隠せなく冷や汗が体中から滲み出た。



 そう、数学でいう文章題とは公式に当てはめられず厄介を通り越して無理ゲーと化すのだ。

 その様に数学が嫌いな者達に受け継がれてきた伝承であった。

 そう焦り口調で心の中で俺イケボみたいな様に喋っていた。



 ――私女だけど



 心の中でツッコミを入れながらもどうするべきかとまた悩む。

 これは先生に聞いても大丈夫かなと、とりあえず判断した。

 AはちらっとBの方を見た。

 一時間目の時とは一変し、自信満々そうな顔で問題を解いていた。


 ――な、なにぃ!?


 Aはまたしても心の中で叫んだ。

 ちなみに声を本当にあげそうだったので必死に口を押さえた。


 だがAは一旦落ち着く事にした。

 あの上で立っている先生は気弱そうだからきっと大丈夫と確たる証拠はないがAは確信していた。


(まだ……大丈夫だ)


「おい、ごら! 」


(ひぃぃ!?)


 突然の小さめの怒鳴り声にAはビビった。

 どうやら別の生徒があまりにふざけた態度だったので怒ったらしい。

 その生徒は授業中にも関わらずイヤホンで音楽を流してたらしく、大音量だったので最初は聞こえなかったらしいが、気弱そうな印象だった先生がイヤホンを両方とも強制的に取った。

 その生徒もようやく気が付いたらしく結構怯えてた。


(あばばばば、やばい……どうしよう)


 実はさっきの授業の時の先生が温厚なのかという推測をした場合、外見と性格合わなすぎる。

 またしても絶対絶命のピンチに陥ったのだ。



「あの……大丈夫?」


 またしても助け舟を出したのはCであった。

 Cは答えと解説を書いた紙を隣からスっと渡した。



 その後は何とか二時間目を乗り越える事ができ昼休みに入った。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「やっと昼かー」


 Aは時間が過ぎるのが遅い事を恨みという感情を想起ながら、やっとだと喜びながら笑みを浮かべた。

 ここは塾専用の食堂の様な所だ。

 さきらの教室とは違い木質の壁で安心感を与えてくれる。


「さーて、お昼を食べましょ」


 パカッと弁当箱を開けるB。

 その弁当箱の中から食欲をそそる香りが鼻腔を通る。


「あっ、私弁当持ってきてないわ」


「何やってるのよ。 あんたはいつも忘れっぽいんだから」


 Bはいつもの様にAに問題点を指摘し、それを直さないAと言うのは最早日常茶飯事だ。


「あの……ここ食堂ですし、何かしら買えると思いますけど……」


 それに自信なさげに助言をするC。


「そーだな。 食堂で買うかー。 でもお金って今あったけ?」


 Aは自分のポケットをに手をつっこみ財布を手にし、財布を開けた。

 中には五百円玉が一つと五円玉が一枚、一円玉が五枚とかなり心細い財布で、涼しそうでもあった。


「う、少ない! まぁ、売ってる物の値段次第だな」


 そう言い、Aは食堂の方へ明らかに自信の無い表情で向かった。

 食堂は人が良さそうなおばあちゃんと言うべき外見の老婆がどれにするんだい?と尋ねた。


「えっと、今の所持金で買える物、買える物ーっと」


 Aは食堂のメニューの値段の欄に目を通した。

 意外と買える物も沢山あるおかげでほっとする。

 そこは学生には優しいのかと呟いて、三百八十円のワカメラーメンを購入した。

 理由はもちろん一番安いからだ。

 注文は食券らしく、食券機に五百円玉を入れてボタンを押すと、食券が出てきた後にお釣りがジャラジャラと音を立てた。

 Aは食券機から食券を取り、お釣りを財布に入れた後に食券を優しそうなおばあちゃんに渡した。

 待っててねの一言の後、数分で注文の品ことワカメラーメンをお盆に乗せて渡された。


「おいしょっと」


 掛け声と共に本日の昼食をBとCがいるところへ運んだ。


「やぁやぁ、お待たせー」


「遅かったじゃない。 もう私達食べ終わっちゃうわよ」


 どうやら八割程は完食した様に見受けられる。


「大丈夫、大丈夫。 私が超スピードで食べてやんよ!」


 そう自信満々な顔で改めてワカメラーメンの方を覗く。

 どうやら上の方にワカメが大量にあり、その下にも麺が大量にあるため、明らかに大盛りと言うべき量だった。


「あんた、それ食べられるの?」


「うっ……だ、大丈夫だってーー。 そんな今は焦る時間じゃないし……」


 考えすぎても解決しないとAは割り切り、その大量の海藻と炭水化物の塊に箸を突っ込んだ。

 食べた感想は普通に美味しいという物であった。


「味は……まぁ、美味しい」


「まぁ、そうに決まってるものね」


 Aは少しずつ上にあるワカメを食べていった。

 ワカメは普通に食べられる量なためあの量は見かけ倒しな分も含まれていた。


「げっ……麺多いし」


 ワカメの下から物凄い量の麺がこんにちわしてきた。

 これはどうしようと嘆いた。



 その後は地獄であった。



 ただひたすら何も考えずに麺をそそりまくっていた。

 それは何とか食べる事が出来た。

 そのせいでAの腹はかなりキツめになった。


「あーー。 しんどかったわ」


 ボリュームありすぎて苦しいわとAは思った。


(もう、こんなところ二度と行きたくないわ……)


「――さてと、次の授業は何だっけ?」


「次は国語ね」


「一番勉強法が分からないあの教科か……」


「そう……かな? ちゃんとやれば……面白いと思うけど……」


 Aは国語という教科を意味不明と言い、それにCが擁護した。

 しばらくしてまた教室へ移動した。



 国語の授業は午前よりも濃く厳しいものではなかった。

 幸い授業は聞くだけでよく、難しくて頭を抱えても答える事は無いようだ。

 Aはとりあえず心の中で『やったぜ、よっしゃー』と思い、授業を聞いていた。


 ちなみにその後は何もトラブルが起きずに帰宅の時間となった。



「やっと、終わりだーー! これで家で思う存分ゴロゴロ出来るぞー!」


 やっと帰れる喜びのあまり授業の終わりを告げるチャイムがなった開口一番に口にした。

 その時に回りから注目を浴びたがAからしたらアリに睨まれるのと同じレベルらしく気にせず帰りの準備を進めた。


「あっ、ちょっと! 待ちなさいよ!」


 早急に帰宅しょうとするAをBは手を掴んで止めた。

 どうやらかなり強く握ったらしく、Aは誰にでも分かる様な痛みを示す反応をした。


「痛ぁぁぁぁい!」


「あっ、ごめん」


「ごめんで許されたら警察要らんわ!」


 一体その華奢な手のどこに筋肉があるのかと思いながらとりあえずは足を止める事にした。


「あんたは早過ぎるのよ。 学校でもすぐに帰ろうとするんだから」


「いやしかしだねBさんやー。 私にとって早く帰ることは睡眠時間とゲーム時間を増やせる事で私の心が穏やかーになるのさ! つまり早く帰る事は私の命に関わる事だからさ!」


「何言っているだか。 でもまぁ、私達も予定ないから帰るけどね」


 Bの後ろから親から顔を出す子供の様にCが顔を出した。


「よかったら……その、一緒に……帰りませんか?」


「うん、まあいいけど。 それに今日はCのおかげで助かったもん。 ありがとう!」


「あ……うん!」


 そんなこんなで荷物もまとまったので三人は塾を出る事にした。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ――帰り道にて


「まったくあんたはいつもこうなんだから」


「いや、それは別にいいし、むしろ誇りだ!」


「あはは、おもしろいですね」


 帰り道ではCとはかなり打ち解ける事ができたらしい。


「ちなみにあんたあの塾へは……」


「絶対行くわけない!」


 Bが言葉を話す途中でそれを遮る様にAは拒否した。


「あんたは……。 まぁ、いいわ。 それがいつも通りのあんただ物ね」


「で、でも、気が向いたらぜひ来てくださいね」


 BはいつものAらしいと言い、Cは少し嬉しそうに来て欲しいと遠回しで言った。

 そんなこんなで三人は駅に着き、別々の方向なので別れを告げる事にした。


「じゃあね、C。 またどっかで遊ぼうね」


「は、はい! ぜひ」


 AはCに別れの言葉を言い、それに返事をしたC。

 その後は解散して、Aは電車に乗り込んだ。


 時間は夕方辺りである。

 それでもまだAは朝からの眠気を取れずにいた。


(んまぁ、楽しかったな。 またいつか行ってもいいかもな)


 Aはそんな事を思いながら一人電車に揺られていた。


 ――その時ふっと眠気が収まった様な気がした。



 ――[完]


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 こんな長いのは久しぶりに書きましたよ。

 さて今回は眠くてたまらない彼女の物語を書いてみました。

 ちなみに名前は考えるのが面倒くさくてABCにした訳じゃ断じてありません(笑)

 よかったら感想などをくれると家の中で三点倒立して喜ぶので、ぜひ感想を送ってく出されば幸いです。

 それではまたいつか。

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