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フクギョウ

作者: 狩野太郎


元旦。

ただ今8時30分。

僕は親と一緒に住んでいる。

両親と僕でコタツを囲みながらそれぞれのお猪口にお酒を注ぐ。

3人にお酒が注がれたあと、お母さんからお父さん、そして僕と今年の抱負を語っていくのが毎年の我が家での行事である。


去年までは「今年もみんなが健康でありますように」と言っていたが今年は違った。


この時、47歳で恥ずかしながら無職。

だから

抱負でなく思っていることを口にした。

「せっかく大学まで出してもらったのに無職でごめんなさい。」ここまで言うと

泣くまい

と思っていたのに涙がとめどなく溢れ出してきた。

僕が泣くのを見てお母さんも泣く。

お父さんはよく分からなかったが…。でもあとで顔を洗っていたので泣いていたのかもしれない。


なぜこの歳で無職なのかと言うと

1つ目の会社T社は一流企業であった。3年半在籍していたが自分の趣味で生きようと考えてアッサリと退職。

その後は、嫌なことがあると辞め、手が遅く周りの人に迷惑が掛かると思うと辞め、クビになることも。それで大体15社あまりを転々と…。

そして先月でも辞めてしまう。


1月15日に派遣社員として働き口が見つかった。

そうして今まで来たのであるが、やはり派遣だと時給制でボーナスもなく又しても親のすねかじりである。


なんとかしないと!と思っていた矢先、

SNSで『副業で稼いでいる』という投稿を見た。

自分で言うのもなんだが僕は甘やかされて育ってきたのでソレになんの疑いもなく興味を持ち、すぐにお金を振り込むが、なかなか芽は出ず今のところ一銭も儲かっていない。


1つのところにずーっといられなく~これは仕事でも言える~また違う副業をし、お金を振り込む。またしても結果は同じく収入はゼロ。


二度あることは三度ある。とはよく言ったもので

こんどこそ!!

と思ったのがダメだった。


僕が流していた 『副業をやりましょう!!』というメッセージに「副業をやっているのですか?私もやっています。毎月○○万くらい稼いでいます。」という女性の返信が来て、僕はまたその話に興味を持ち電話することになった。


何日の何時に待ち合わせ

話を聞くことに。


待ち合わせの駅から歩いて、ある事務所に着く。

そこには当の女性の姿はなく男性が1人。

「彼女は体調を崩して代わりに僕が説明を」とその男性は言った。

「私共は稼げる案件を色々持っています」

と言いながら様々な案件をプリントしてある紙を見せてくれた。

そこには今の僕には想像もつかない金額な書かれていた。

月100、1000万などなど。

よく読んでみると『こちらの紹介する融資先からお金を借りて増やしてください』との内容。


それを読んでサーっと血の気が引いていく感じが分かった。

「あのぉ~…僕、、やっぱり辞めときます」

すると、ドアから何人も厳つい男が入ってきて

僕の周りに立った。

男性が言った。

「この案件内容を知ったからにはやってもらうよ」


僕は悟った。

紹介した女もグルだったのか?


後へは引けず契約書にサインをし、

借り入れる羽目になった。

もちろん両親にはこの事(副業をするということ)は言っていない。

だって言ったら必ず反対されるのが分かっているもの。

そして、「途中で辞めたら契約違反として1千万円もらうからね」とも言われた。

理由を聞くと、「全ての案件を知ってしまったから」との答えだった。

まだ紙を見ただけなのに…。


もう借りるしか無いので紹介された融資先から500万円借りて、その後どうやれば稼げるのかを女性の人に聞こうと ラインを入れた。

待てど暮らせど一向に返事がない。

電話もしてみたが掛からず。


やってしまった。。


でも借りたお金でなんか自分で考えうるだけの投資方法を考え、投資につぎ当てた。

甘かった。

儲かるものもあったが、トータルで負け。

あっという間に500万が130万に。


利息もつき、返せなくなると思ったら心臓が痛くなってきてしまい心がズタボロに。


親には絶対に言えない。

それもそのはず、以前(20代半ば)に

会社の近くに独り住まいをしていた時、「もっと稼ぐぞ!!」という思いで

UFOキャッチャーの機械を、借金して買ったものの

儲かったのは最初だけでこれもトータルでマイナス。

借金は親が代わりに全額払ってくれた。

そこで『二度と借金はしない』

と両親の前で約束したのだ。


どうしよう。

優しい両親。

47で無職だった僕を責めるわけでもなく、

料理もしてくれている。


そんな両親ももう歳だ。

迷惑をかけたくない。




……………。



自分に生命保険をかけて死のう。

と決めた。


駅のプラットフォームから飛び降りよう。

そう決めた僕はフラ~っと家を出た。


飛び降りる寸前、誰かに手をつかまれ引き戻された。

お母さんだった。

お父さんが自分の最近の行動がいつもと違うことに気付き、お母さんに尾行させていたみたいだった。

母は泣きながら僕の腕を掴んでいた。


もう正直に話すしかない。

全てのことを両親の前で話し、

警察に言ってもらい、解決した。




~⚫︎~⚫︎~⚫︎~⚫︎~⚫︎~⚫︎~⚫︎~⚫︎~⚫︎~


全ての副業が、ダメというのではない。

やるなら下調べをちゃんとしてからじゃないと

後悔することになる。

ということだ。

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