余舞目
絆の痛み。心の傷み。
「暑いー」
「・・・ならセーター脱げばばいいのに」
「・・・」
「何でいんのって顔に書いてある」
「・・・よくわかってらっしゃる」
たださ、言いたくなるときだってあるじゃん?
「蝶子ちゃんて何でセーター着てるの?」
「・・・」
「暑いなら脱げばいいんだよ。みんな腰に巻いたりしてんじゃん?」
「・・・・セーターでいいよ、うん」
理由は聞かないでって悟ってくれないかな。
あ、金色には無理か。
「・・・いっつも思うんだけど、蝶子ちゃんて細いじゃん」
「・・・・・別に普通じゃない?」
「セーター着てるの見るとこっちが暑くなるんだよね」
「・・・」
自分の両腕を見る。
日陰にいるとはいえ、暑いのは確かだ。
でも、あたしはセーターがいい。
「・・・理由は聞かない方がいい?」
「・・・うん」
「そっか、なら聞かない」
今の時間は自習らしい。
金色は自習だと知ると、すぐ屋上にきた。
「・・・風が気持ちいーねー」
「・・・そーだねー」
「・・・んじゃ俺そろそろ戻る!」
ケイタイの時計を見ると、休み時間も終盤になっていた。
また、これから一人の時間の始まり。
「そんな寂しそうな顔しないでよ、蝶子ちゃん」
「・・・してない」
「してるよ、顔に行かないでって書いてある」
「書いてなっ」
「・・・あ」
突風があたしの言葉をかき消した。
金色の髪とあたしの黒髪を飛ばす。
そして、あたしは自分のスカートを抑えた。
「・・・バラの・・・刺青?」
「・・・!」
スカートを抑えたのが遅かったのか、
金色があたしの足元を見たのが早かったのか。
無言が訪れた。
お互い何も言わないで
ただ、風が訪れる。
「・・・お、俺戻る!」
「・・・う、うん」
金色は勢い良く立ち上がって屋上を走って行った。
上履きが床を叩く音だけが聞こえていて。
また一人の時間が訪れた。
何でだろう
こんなこと、今までだってあったはずなのに
離れていく人ばっかりだったのに、
「なんで、こんなに心がぽっかり開いたような感じになるの」
泣きたいなら泣けばいいって
そんな時は俺を呼んでって言った金色。
「それじゃあ、金色に泣かされたら、どうすればいいの」
呟きは、少し雲の多い空に小さく溶けていった。
作者のゆチャンです。
タイトルの刺青が出てきましたーw
何だかシリアスな感じですが、
次回をお楽しみにしてくださいませ。