桟舞目
少しずつ、心の中に現れる光り。
あの日から少しだけ変わった、あたしの学校生活。
屋上でサボるのは変わらないけど、
休み時間の度に金色が来るようになった。
「蝶子ちゃん、授業受けようよ」
「・・・やだ」
「みんな、蝶子ちゃんのこと待ってるんだよ?」
「・・・そんな訳ないでしょ」
こんなやり取りが繰り返されて、
また授業になれば金色は教室に戻っていく。
あたしみたいな、暗い人間より
あの金色は明るい人間たちといた方がいい。
あたしなんて、過去さえ拭いきれない臆病な人間なんだから。
「・・・くっ」
泣きたくなった。
理由なんて分からないけど、
ただ、無性に涙が溢れて。
「『泣きたいなら泣けばいいんだよ』俺、そう言ったはずだよ?」
教室に戻ったはずの、金色がそこにいた。
あたしの前で座り込んで、
いつもの笑顔で、微笑んでいた。
「ほら目赤くなっちゃうから、こすらないで」
「・・・」
腕を引っ張られ、あたしは金色の方に倒れた。
必然的に金色に抱きしめられる。
「・・・泣きたいなら、俺を呼んで蝶子ちゃん。理由は聞かない、泣きたいなら我慢しないで泣いていいんだよ」
また涙が溢れた。
抱きしめられたままで、金色は優しく背中を叩いてくれた。
ただその抱きしめられた感触が、暖かくて怖くなった。
また同じことを繰り返すことになるかもしれないって、頭のどっかで思ってたんだ。
「・・・んじゃ俺教室戻るから!」
「・・・」
いつもと同じように笑顔で屋上を去ろうとする。
「・・・と」
「ん?」
「・・あ、りがと」
ほら、その笑顔。
照れくさそうに笑う、金色。
抱きしめられた時、いつもとは何処か違う一面を見た気がした。
きっと、あたしだけじゃないんだろうけど、
その一瞬だけは、金色を信じたくなったんだ。
「みんなー、聞いて!!!!!!」
「なんだよ、お前いきなり抜けたと思ったら」
「蝶子ちゃんと少しだけ仲良くんなれた気がする!!!!!」
今はまだ、数mの進歩。
ゆチャンです、こんばんわ。
何かあたしにも展開が読めないデス。
少しずつ確信に迫ってければ、と思います。
次回をお楽しみにしてくださいませ。