王宮
「な〜んか、想像と違う場所きたなぁ」
イガラシがぼやいた
九士団に連れれて来られた場所は牢獄だった
石壁に鉄策
どこから流れて来てるか解らない水の滴る音がする
4人は椅子に座らされ手足と体に鎖を巻かれていた
ホテルを出てかなり時間が経っている
「着いて来れば王に会えると思ったんだけどな」
的外れな場所へ来て苦笑いするコッコ
クリビーとキーンは鎖をガチャガチャと動かし強度を見ている
鉄策の奥からは カツンカツン と石を叩くような音が近づいてきた
4人は座り直し鉄策の向こうを見ると
入ってきたのはシュン
背が高くスマートで面長の顔
顔つきは険しい
「お前ら何なんだ?」
開口一番喧嘩口調
「何なんだって、俺たちはボードバックのアベさんに頼まれてこの国に来た対テロメンバーだよ、なんでも屋だ」
素直にコッコが答えるとシュンはしょっぱい顔をした
「どこからその話を聞いた?」
「だからアベさんだよ!」
「そんな訳あるかっ!お前ら怪しすぎる!ボードバックからならもっとちゃんとした奴らが来るはずだ!」
「失礼だな」
シュンの重い口調に対し軽く答えるコッコ
「なんで映像や写真と違う!どんな手をつかった!」
「カメラ映り悪んだ、免許証の写真も取り直したくらいだ」
おどけて答えるコッコだがこれは作者の実話である
「ふざけるな!目的はなんだ!」
ガシャンと鉄策を握りムキになるシュン
「しつこいな!アベさんに皆さんの事を王の事をテロリストから守ってくださいって言われたんだって」
呆れ顔でコッコが返すとその態度が気にいらないシュンは鉄策を蹴飛ばした
その様子はモニターで他の九士団も観ていた
「どう思う?」
ヤマタカがモニターを観ながらみんなに問た
「ぶっちゃけ、怪しさ全開な連中だけど、テロリストとは違うっぽいよな」ムロはテーブルに肘をついて様子をみた
カメラ目線でシュンが合図を送る
「マジかぁ!冷静さにかけてるよな」
スガが顔を天井に向けた
「取り敢えず、命令なんで行ってきます」
アラキが立ち上がり部屋を出て行った
「あいつら誰か死ぬんじゃねーの?」
少し呆れてぼやくハルマ
「ゴウ!一緒に行って危なくなったら止めてくれ」
ヤマタカが心配してゴウをアラキの元へ向かわせた
容疑が確定してないのに死人がでるのはまずいと判断した
「王に言ってアベさんに確認してもらえばいいじゃないの?」ヤギラがムロとヤマタカに提案するも
「結構派手に断ったみたいよサダ王、確認どころか用心棒みたいの来たの知ったらプライドが許さないんじゃない?」
ムロの言葉に納得してしまう
牢獄は少し冷えている、日が入らず明かりも少ない為 通常の人ならすぐにでも気持ちが折れるのだが
4人は普通に座っていた
シュンはそれも気に入らない様子だ
カツンカツンと2つの足音がシュンの元へ近づく
「本当にするの?」アラキが黒いケースをもってゴウと共に現れた
「おい!ロン毛!」
聞きなれない呼ばれ方に少し驚くコッコ
「俺か?」
「今から拷問をする、目的と素性を話せば許してやる」
「めんどくさいなお前!どうすりゃ信じるんだよ!アベさんに確認できるだろ」
「交渉決裂だな」
「お前友達すくねーだろ!会話できねーのか!」
コッコとシュンのやり取りにプッとゴウが笑った
睨むシュンにゴウが手でゴメンゴメンと合掌した
「お前みたいな奴は自分よりも仲間がやられた方が苦痛なタイプだろ」
「そんな事ないね、俺は痛いのが嫌いだ、他のやつなら俺は痛くない」
「なら なんでさっきからお前だけが的になる様に俺を挑発する?」
「それは…あれだよ…あれな…」
核をつかれとまどうと
少しシュンが勝ち誇った顔をする
確かにコッコは自分より周りが傷つけられるのを嫌がる
「やめろよ、冷静に話そうぜ」
コッコが申し訳なさそうに言うとシュンは嬉しそうにアラキと牢獄へ入ってきた
クリビー、キーン、イガラシは少し緊張した
スーツを着てるとはいえ拷問という響きに怯える
「おい、お前」
クリビーを指差す
「……」
沈黙するクリビーを椅子ごと持ち上げ牢獄の天井にある釣り鈎に引っ掛けた
「すげぇな、おい」
キーンがぶら下がるクリビーを見上げた
背が高く力があるからこそのパフォーマンス
「辞めろっ!俺の話を信じろって!」
コッコは鎖をちぎる体制を取り始めた
「アラキ、見せてやれ!」
シュンがそう言うとアラキは自分の体の前にケースから取り出した棘付きのムチを1本字に広げた
「ムチ?」
コッコとイガラシ、キーンがハモった
「棘付きだ、かなり痛ぇぞ!これに耐えられる奴は中々いない、皮膚が剥がれ肉が削げ落ちる」
サディスティックな喋り方になるシュン
「私のムチ捌きは国内1よ、覚悟しなさい!」
ビュン!バチン!
とムチで床を叩くと床石が割れ、小石が飛び跳ねた 鈍く重い音が牢獄内に響く
拷問がムチで相手がクリビーという事でコッコは鎖を千切るのをやめた
「どうした、お仲間がやられるぞ」
嬉しそうに笑うシュン
「クリビー、キツくなったら教えてくれ」
コッコがそう言って体制を整えた
「何を言ってるんだお前ら!後悔するぞ!やれ!アラキ」
「はい!」
アラキがそう答えると
棘ムチはフォンフォンフォンと空を切り音をたてる
鋭く尖った棘と共にムチがクリビーを襲う
ビュン、バチーン!ビュン!バチーン!
キーンは痛そうな顔をしながらクリビーを見た
会議室では始まったかと言わんばかりに九士団がモニターを観ている
ビュンビュン!バチーン!バチーン
何度も何度もムチはクリビーへと打たれる
しかし、クリビーは普通の顔のままだった
スーツのおかげで皮膚も肉も傷ついていない
驚くシュン、アラキ、ゴウ
「なんなんだ?」
シュンがそう言うとクリビーが不貞腐れた顔でシュンを見た
「なんなんだはコッチのセリフですよっ!期待はずれじゃないですか!」
シュンとアラキは何言ってるのかわからなかった
プッと笑うユニバーサルの3人
「そこの女子っ!」
「はいっ?」
突然呼ばれて あたふくアラキ
「何が国1番だよっ、力だけのムチ捌きじゃないかっ!」
「え?え!えー?」
アラキが挙動不審になる
頭が追いついて来てない
「こんなんじゃこの先誰も何も吐かないぞ!もっとムチに気持ちを乗せるんだ!」
クリビーがどこぞの元テニスプレイヤーばりに熱くなった
「あ、はいっ」
アラキは頭を下げて返事をした
シュンは頭の中を整理し始めた、混乱している
「さぁ、気持ちを込めて打てっ」
「ハイ!」
ビュン!バチーン!
「違う!手首にスナップを利かせて、身体を預ける!そして気持ちを込めるっ!」
「ハイ!」
ギュン!バチーン!!
「あ♡」
クリビーの顔が歪む
ブハッっと吹き出し爆笑する3人
「今のいいぞっ!もう一回!」
「ハイ!」
その後もしばらくこれが続いた
腹が痛くなる程笑う3人を見てシュンが我に返った
「やめろ!アラキ!もういいっ!」
息を切らし膝に手を置きゼーゼーいうアラキ
ぶら下がるクリビーは至福の顔つきでイッテいた
「お前っ俺の上でイクなよっ」
キーンが迷惑な顔で見上げた
その様子を観ていたゴウが我慢できず笑い始めた
「凄いよキミ、この短時間でムチの打ち方、半端なく良くなったよ」
腫れた顔で笑顔を見せるクリビーにアラキの胸がキュンっとする
「ハイ♡ありがとうございます」
妙に爽やかな笑顔でアラキが答えた
更に爆笑する3人とゴウ
「お前ら本当に何なんだっ!」
シュンが怒鳴ると
ピーピーと通信機が鳴った
ヤマタカからだ
「変な映像が流れてきた!そっちの監視モニターに映像をまわすから観てくれ」
シュンとアラキは牢獄から出てゴウと監視室へ行く
「俺らも行きますか」
「だな」
「はい!」
そう言って3人はフンっと鎖を簡単に切って3人の後を追った
クリビーは余韻に浸っている
夜は更け王宮の外は少し静まっていた
前祭は終わり、メイン祭迄のお休みタイム
屋台は布が被され、酔っ払いは道端
騒ぎ疲れた人達は外で寝ている
無防備だが
普段からこの国はそれだけ安心できる治安の良さがある
ドームのライブ会場も灯りが消えて
換気ダクトの音だけが響いている
薄暗いドーム内の席ではお客さん、控室ではスタッフやアーティストも疲れて寝ていた
真夜中のホイップの控室 ベッドでミヤビが寝ている
隣のホイップがミヤビを起こさぬ様にスッと起き上がり服を着て控室から外へと消えて行った
王宮内牢獄監視室
回ってきた映像には白装束と仮面だけが映っている
変なリズムの音楽がひたすらかかって画面下にはタイマーの様に時間が秒単位で減っている
「こ、これは」シュンが驚く
「テロリストだろ」
え?と振り返ると
入り口からモニターを観ているコッコ達がいる
「マジシャン?」ゴウが目を輝かせた
アラキはそこにクリビーがいないのがつまらなかった
「お前達は…」
シュンは言いかけてやめた
「このカウンターが0になったらテロがはじまるのか?」
ゴウが呟くと
「いや、予告がはじまるんじゃねーか?」
コッコが返した
「予告?」アラキが聞くと
「あれっすよ、ヒップワンもお隣の過激派宗教国チェアバカルディと同じでテロに神聖な物を感じているから、儀式として必ず長い説明を予告としてやるんすよ」
イガラシが人差し指を立てて説明する
「なら今のうちに電波を逆探知して潰してやる!」
シュンが拳を握りモニターを睨んだ
「そんな簡単にわかれば世界中のテロは防げてたろ」
「うるさい!」
シュンはコッコの発言を一蹴してヤマタカへ逆探知をする様に言う
その命令を聞いてクロキが解析へと入る
他の九士団メンバーはいつでも動ける様に武器庫へ行き準備をはじめた
外は朝を迎える空になる
綺麗なグラデーションを作り
夜が明けていく
モニターのカウンターの数字は後2時間で0になる
シュン達は移動して会議室へ戻った
「しかし、随分長いタイマーセットしたな」
スダがボヤく
戦闘準備をしてモニター前にいる九士団達
「それも何か意味あるのかなぁ」
ムロが両手を頭に乗せ時間を観ている
「まだわかんないか?」
「電波自体が確認できないのよ、映像は来てるのに」
ヤマタカに急かされ、クロキがキーボードをカシャカシャと叩く
隣ではアラキも手伝っていた
「アナログ式だからじゃないですか?」
クリビーが画面を指差す
アラキがクリビーを見つめてる
"天才♡"
アラキの心の声である
「何でお前らここにいんだよっ!」
ヤマタカが突っ込んだ
「俺が許可した、牢獄も拷問も効かないならそばに置いといたほうがマシだ」
シュンが投げヤリに言った
「でも、会議室まで連れくんのはどうかなぁ?」ハルマが4人を指さしながら嫌がる
「俺らも一応戦術をたしなんできてる、役に立つと思うぞ」
コッコがそう言うとシュンがつまらない顔をする
「殺し以外は何でもする、いい加減みんなの力にならせてくれ」
露骨な態度のシュンをなだめるようにコッコが話すが態度は変わらない
「殺しはしないのか、甘いな!相手はテロリストだろ殺す気で行かなきゃ死ぬぞ!俺達は今迄そうやってやってきたんだ!」
捨て台詞の様に吐き捨てた
「別にあんたらの殺しを肯定するつもりも否定するつもりもない!俺だって人を殺した事が無いわけでもない、ただ、俺達は誰も殺さない!命が重い、それだけだ」
今まで飄々としていたコッコが真面目に答えた
クリビーとキーンはコッコの発言に驚いた
フンっと鼻で笑うシュン
「綺麗事だな」
「それが大切なんだ」
険悪な空気が流れる
それを切るかの様にクロキが入ってきた
「アナログ電波確認しました、国営テレビ局です」
顔をモニターへ向けるコッコとシュン
「テレビ局行ってきます」
スダ、ハルマが部屋を出て行った
シュンは椅子に腰掛け深いため息をついた
「なぁ、何故そこまで俺らを受け入れない」
コッコがシュンに取り入る
「やりたきゃ好きにしろよ、俺らは協力しない」
話が進まない
「あんたらは知らないだろうが、俺らが全員揃うのは1年に3回しかないんだ」
突然ヤマタカが入ってきた
「?」
「年越し、夏正月、周年祭この3回だ」
「だから?」
「貴重なこの集まり時を濁された、泥を塗られた!!だから俺たちの手で片付けたいんだ」
「メンツか?」
「そうだ、王もそれを見越してアベさんの話を断ったんだと思う、そして他の国の人をこの国の為に傷つけたくないんだ、この国の事はこの国の人間で解決する」
豪傑なヤマタカが冷静に告げた
コッコは話が理解出来てきた
シュンが頑なに自分たちを認めないのも嫌いとかでは無く無傷で国を出て行って欲しいものだと解釈した
「以外に優しいじゃねーか」
ニヤリとシュンを見た
「お前らを初めて見た時から、ただもんじゃない事は解った、敵なら脅威とも思った、どっちにしろここに居てはいけないと判断させてもらった……」
振り絞るように話し始めた
「あの時、お前を初めて大通りで見た時に感じた嫌な気配を今は感じない、だから少し腹を割って話す」
「嫌な感じ?」
イガラシが首をかしげた
「あぁ12年前、俺たちの国を苦しめてた奴等と同じだった」
「ヒップワンの連中?」
「そうだ、神の名を語り人を殺し、欲を思うままに満たすクソ野郎共だ」
シュンがそう言うと他の士団が下を向いた
「サダ王が来て助けられたが、本当に酷か
った!アラキは8歳で犯されそうになった、目の前で親を殺され、その場でだ!だから自分を守る為、敵を殺した、ヤマタカは自分の婚約者を目の前で惨殺された、ヤグラは目つきが気に入らないってだけで身体中に爆弾巻かれてあと少しで木っ端微塵だ、俺らはそんな中を絶望しながら生きて来た、あの時それを思い出してしまったんだ」
シュンはトラウマを抱えていた、今 世界一の兵士のリーダーになる程の男でも自分の過去に立ち向かうのは難しい
「だから、敢えて言う この国から出て行ってくれ」シュンがガクッとうなだれた
「解ったよ、国はまだ出ないがホテルへ戻って大人しくするよ」
コッコが折れた
クリビーとキーンが驚く
「すまない、また、あの気配をお前らから感じたら俺はお前らを……」
そう言いながら深々と頭を下げた
複雑な心境ながらも詫びを入れるシュンに九士団が驚く
コッコはクルッとシュンに背を向け
「最後に1つ 俺の前にいた老人を探して見れば何か解るかもしれない」
出口へ向いながら投げかけた
クロキが急いでパレードの画像を出す
「クソの匂いがする老人だ」
そう言って口元を尖らせ部屋を出た
「いいの?行かせて?」
ムロがシュンに言うも無言のままだった
ゴウはこっそりとユニバーサル4人を追いかけた
明るくなってる空を王宮のロビーから見る
「夜あけてんじゃん」
キーンがつまんなさそうにボヤく
後から足音が近づいて来た
「ちょっとまって!」
ゴウが4人を呼び止める
「どうしました?」
イガラシが言うと
「なんだろ?僕は君達が嫌いになれないんだ、だからと言う訳ではないけど誤解されたままが嫌でね、シュンの事悪く思わないで欲しい、あれで色々考えて行動してるんだよね」
と、とても柔軟に話してきた
勿論ユニバーサルのメンバーも解ってる話
笑顔で答えた
「物のついでと言っちゃあ何だけど、良かったらこの国の過去を教えてくれないか?同盟国になってないんで情報がないんだ、みんなを見てると興味がでてきてね」
コッコがそう言うとゴウはロビーの椅子へ案内して クックアイランドの話をし始めた




