鬼との同棲
一軒家が立ち並ぶ住宅街。簡素ながらも綺麗に整頓された区画造りから日本で最も整った住宅街と評されるここで、事件が起きた。
「やった…これで…」
ぶつぶつと独り言をはく男は会社帰りのサラリーマンのような格好でネクタイは外し、シャツが乱れていた。額に大粒の汗を流しながら男は床に落ちているものを拾う。
それは真っ赤な包丁。赤い塗装が施されているわけではなく、魚をさばいてもここまで出ないだろう真っ赤な血だった。
男は自分の服を見る。カッターは乱れているがビニールのかっぱを着けている。そこには血がベットリと付いていた。
包丁も綺麗に洗ったことで消毒液をかけ、包丁棚に差し込む。
あとは床で倒れているものを片付けなくてはならない。これが一番の大仕事だ。
そこには無惨な姿に成り果てた女の姿。数度刺された腹部から血液と肉片が漏れ出て床に血だまりが出来ていた。
この女は自分の妻であったものだ。姿かたちは変わり果てているが笑顔がやさしく綺麗な女性だった。殺すつもりはなかった。だが、こうせざるを得なかった。庭に繋がる窓を開け、抱き抱えた女をぶっきらぼうに事前に掘っておいた人間大の穴に捨て置いた。
そこにカーペットも入れて、土を被せた。