幕開け
――世界の原初、創造の果て。遥か古代の物語。
不死はない、滅びという決まった未来。
もし、生存の願いがあったなら。
もし、一人の乙女の慟哭が受け入れられるのなら。
再び、滅びが定まる前へ回帰するのもまた一手に違いない。
冷ややかな露が窓をつたう。寒さなんて伝わらないと思っていた城内にも冷気が漂う。
外はよほどの寒さらしい。触れた窓硝子もひんやりと冷たさを私に訴える。
「驚いた、こんなに外は冷えていたのか。」
「ここはあまり寒さも暑さも伝わらないものね。」
仕方ないわ、と君が微笑む。
「今は冬?」
「秋じゃないかしら、雪は降っていないのでしょう。」
何気なく見つけた窓は私たちに色々な意外なことに情報を与えてくれた。
「まだ明け方だもの、秋でもきっと厳寒なのだわ。」
外の景観に意識を傾けて、二人の会話は自然と無くなる。発見した窓硝子は私たちの乾ききった生活にわずかでも朝露を垂らしてくれた。
「少し、冷えてきた?」
「そうだね。」
窓からの冷気は気が付けば体の芯にまで染み渡っていた。頑丈な石造りの床にもつたった露は群れをなしていた。私たちはここから離れることにした。いつもの暗い廊下、響く足音。昔は怖がっただろうに、今はなんとも思わない。
ねぇ、と君が振り返る。
「枝垂は――――――」