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騙して済まなかった。

『今日はありがとな。騙して済まなかった。また埋め合わせさせてください。』

学は恐る恐る瑠奈にLINEを入れる。…と、すぐに返信が来た。

『騙してまで会わせる必要があったの?拓也君は悪い人じゃないと思うけど、騙されたことが超ムカついた!』

『ごめん。』

拓也にせがまれたとはいえ、なぜあんなに焦って強引なことをしてしまったのか、今更ながら後悔した。ハッキリした性格の瑠奈が思ったよりも気分を害してしまっていることにも凹んだ。

『本当は、何かあったんじゃないの?学は意味不明な時、たいてい隠し事してるよね?』

…読まれた!さすが瑠奈だ。しかし、どうしよう。こんなに見合い話に動揺していることを話して、大丈夫だろうか?

酔いの残る頭では、今の心境を文章にできなくて、思い切って通話ボタンを押す。

「もしもし…何?」

電話に出た瑠奈はまだ少し怒った声だ。

「ホントに、ごめん。」

「何があったわけ?」

ほんの少しだけ声が優しくなって、学はホッとする。

「実は、親に見合い話を持ちかけられて、そんなときに拓也にお前との仲を誤解されていることがわかって…。」

「話が見えないよ。ってか、見合い?意味わかんない。」

「俺、話したと思うけど、跡取りなんだ。だから、親は早く、結婚相手を決めたがっている。でも今はまだそんなこと考えたくなくて。どうしたら良いかわからなくなって。そんな時に拓也に、瑠奈に会わせて欲しいと頼まれて。それに、お前との仲がまわりに誤解されたままだと、彼女もできないまま、そのうち本当に見合いすることになるんじゃないかって、考えてしまって…。」

「それで、私と拓也君を“お見合い”させたわけ?身勝手にも程があるわね。」

「ごめん。どうかしてた。明日は、朝イチから学校?」

「そんなことを心配しているなら、一緒にいるべきではないね。おやすみ!」

瑠奈は一方的に電話を切った。


「カーッ!けったくそ悪!」

ビールをグイッと流し込んで悪態をつく。あぐらをかいて、スルメをしゃぶる。どこかのオッサンも顔負けである。このオッサンぶりを思うと、拓也に目を覚まして欲しいと思った学は、なかなか親切な人間かもしれない。

学の今日の言動も拓也との“見合い”のセッティングも、瑠奈にしてみれば、わけがわからない。しかし、学が彼女を作りたいというのなら、瑠奈がそばにいるべきではないということは理解できた。学といると話題が尽きなくて楽しいが、そんなことを言われてまで行動を共にする気にはなれない。オッサンな瑠奈にも、少々のプライドがある。

「うん!ウマい!」

スルメに飽きて、柿の種を頬張る。ボリボリやっていると、弟の浩司が顔をのぞかせた。

「色気ねーなぁ。普通にしていれば、そこそこのレベルなのに。」

「ほっとけ!」

「ところでさ、俺も飲みたい。」

おずおずと切り出す。

「馬鹿者!高校生が!…と言いたいところだけど、一本だけだよ?」

ニカっと笑い、缶ビールを浩司に渡すと、満面の笑みで一口。

「サンキュー。…ところでさ、姉貴って、姉貴っていうより、兄貴っぽいよな。」

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