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乾杯。

「コンセプトが違うだろが!」

翌朝、学が拓也に文句を言う。こともあろうに、拓也は、お高めなステーキハウスを予約してきたのだ。

「瑠奈ちゃんには、こういう店の方が合うだろ。」

「そーじゃない!瑠奈は、そういう趣味じゃない!」

「いいや!焼き肉食べ放題なんて指定するお前が無神経だ!」

瑠奈の本性を知らない拓也は、焼き肉食べ放題でのご対面がどうにも気に入らない。しかし、瑠奈が大好きなのは食べ放題、特に焼き肉食べ放題が好きなのだ。例のル・クルーゼのカフェはオシャレな方たが、やはり食べ放題。あの瑠奈がオシャレなカフェの食事で足りるはずがないのだが、それを知らない拓也は”普通の女の子“として捉えているため、学のセレクトが無神経に思えてならないのだ。


さて当日。とある焼き肉食べ放題の店に3人で集まった。ステーキハウスを主張する拓也を説き伏せて。

「瑠奈、コイツが大学の友達で…」

「江口拓也と申します。学がこんな店を選んでごめんね。気の利かないヤツで…。」

学が紹介しだしたら、拓也は割って入って自ら話しだした。

「いえ、こういう店の方が気が楽なので…。」

瑠奈は拓也の顔をまともに見ようともせずに、ぶっきらぼうに返す。

「…で?相談って?」

学はしまった!という顔をする。“相談したいこと”を考えておくのを忘れていたのだ。

「何?相談って?」

拓也もきく。

「あ。イヤ…その…。」

「私とこの人と3人で会って、相談したいことがあるって言ったよね?」

「その件は、解決したんだ。言うの忘れて…」

言い終わらないうちに瑠奈が立ち上がる。

「用が済んでるなら帰る!」

人見知りの瑠奈にとって、用もなく同席するのは苦痛でしかないのだ。

「まあまあ、そう言うなよ。せっかくだから食っていこうぜ。なあ、拓也。」

学は瑠奈の手をつかんで引き留めながら、あっけにとられる拓也に声をかける。

「そ、そうですよ~。せっかくだからご一緒してくださいよ~。」

「まあ、座れ。そんな怖い顔をするな。」

瑠奈は不機嫌を隠そうともせず、しぶしぶ座り直す。

「悪いな。瑠奈こいつ、人見知りなんだよ。」

「あ。そうなんだ。でもさ、今日から、知り合いになったわけだし、よろしくね。」

つとめて明るく話しかける拓也に対して、瑠奈は無言で軽く頭を下げるがまたしても目を合わせる気配もなく。そしてテーブルの下では学の足を踏んづけている。だまされたことに気づいて、無言で怒っているのだ。

「さあ、注文するぞ。」

オーダーバイキング形式なので、テーブルのタッチパネルでオーダーをするのだ。学は足の痛みをこらえて、瑠奈の好きなものを優先的にオーダーする。その向かいの席では無言でスマホを操作している。

『騙したな!おぼえてろ。タコが!』

まだ足を踏んづけたまま、学にLINEを送る。


ビールが運ばれてきたころ、やっと瑠奈が足をどかしてくれた。

「はい。乾杯!瑠奈ちゃんとお近づきになったお祝い!」

拓也がジョッキを上げると、瑠奈もしぶしぶジョッキを近づける。

「よろしくね。」

拓也が笑顔でジョッキを軽く合わせると、瑠奈は無言のまま、グイッとジョッキの半分近くのビールを喉に流し込む。

「え…?」

拓也は目が点になった。

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