飲むぞー。
「おーい。来たぞー。」
パスタを食べながらチビチビやっていたら、9時過ぎに、バイトを終えた拓也がコンビニ袋を下げてやって来た。チューハイとツマミを買ってきたようだ。明日は2限目からなので、多少の夜更かしは余裕だ。
「瑠奈ちゃんは?」
拓也が部屋をキョロキョロと見回す。
「いねーよ。」
「瑠奈ちゃんがいるかと期待してたのに~。」
悔しそうに言う拓也に、グラスと、用意していたツマミをすすめる。
「やっぱりあいつ、女とは思えないぞ。服装から行動から男だぞ。」
拓也のグラスにビールを注ぎながら言う。
「お前、独り占めしたくてそんなこと言って、他の男を遠ざけようとしてるんだろ!」
「なワケねーだろ!」
…今の拓也には何を言ってもムダかもしれない。
「まあ、いいから。飲め!」
…今の状況は論じ合うことが良いとは言えない。いや、俺にはその気力がない。見合いの話でムシャクシャして、気晴らしに飲みたいだけなんだ。
学はぐいっとグラスをあける。
「学ー。本当のところ、どうなんだよ?」
拓也がまだ瑠奈とのことを詮索してくる。
「しつこいな。お前は。ただの友達だよ。お前が思っているような関係じゃないよ。」
「じゃあさ。会わせろよ。」
「いいけど。後悔するなよ。」
「また〜。もったいつけてる!」
「つけてねーよ!瑠奈には話しておくよ。」
「約束だぞ〜…。」
拓也は、そのままイビキとともに寝落ちしていった。学はといえば見合いの話を話すのも抵抗があったので、話さなかったが、飲んで騒いで、幾分、楽になったように感じている。見合いを取り消してもらうことと、拓也に人見知りの瑠奈を会わせることを考えながら眠りに落ちる学だった。