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成人式。

「よくお似合いですよ。」

美容師が二人の晴れ着姿に目を細める。カップルで着付けに来ているので、それだけでも目立つのだが、二人の色の揃え方や小物の組み合わせがなかなか粋な感じでいっそう目立っている。手元がおろそかになって注意された美容師もいたくらいだ。

そう、今日は成人式。一緒に選んだ、あの晴れ着を着ているのだ。


「あら。いいじゃないの!」

二人を迎えに来た時絵が思わず声を上げる。照れ臭そうにしている瑠奈と、隣でデレデレ顔の学。学の顔さえもう少し引き締まれば、なかなかお似合いの二人だ。


時絵が運転する車で一旦、瑠奈の家に行くと、時絵が玄関で家の中に向かって声をかける。

「お父さん!瑠奈の晴れ着姿、見てくださいな!」

雄一郎はムスッとした表情の割には、すぐに出てきた。

「馬子にも衣装とは、このことだな。」

一瞬だけニコリとしたが、やはり仏頂面を作り、ムスッとしている。よほど照れ臭いのだろう。

「ところで、こちらは…?」

並んで立っていた学に目をやり、時絵に訊く。

「瑠奈のボーイフレンドでね…」

時絵が言い終わらないうちに学が自己紹介を始める。

「お父さん!初めまして。吉野学と申します。瑠奈さんとはけっ…」

「あ、あの。彼氏なの。ちょっとお調子者でね。」

結婚のことを言いだしそうな学の口を慌てて塞ぐ。

「あ、あの。お母さん。会場の周辺が混みそうだから、早めに送って行って欲しいんだけど。」

学が余計なことを言う前に移動したいと焦る。

数日前のスッポンポンプロポーズは、半ば押し切られるようにOKしたのだが、瑠奈としては、今はまだ二人の間だけの口約束にしておきたいのだ。


送ってもらう車中も、瑠奈はヒヤヒヤだった。

「あの、けっ…」

「学の結膜炎、良くなった?」

「はあ?けっ…」

「ホラ、結膜炎で眼科に行ったじゃない?」

こっそりと瑠奈は学の太腿をつねり、“言っちゃダメ!”と目で訴える。似たようなやりとりを会場に着くまで繰り返していた。


「オシャレ〜!彼氏?着物、お揃い?」

「瑠奈じゃん!久しぶり!女らしくなったわねー。」

会場に着くと、あちこちから瑠奈に声がかかる。瑠奈は地元なので同級生がたくさんいる。やがて、大学の友達の顔がチラホラ見られるようになって、学がホッとした表情かおをする。


「さすが、学内でも有名なカップルだけのことはあるな。」

お揃いの衣裳に感心する声が聞こえてくる。

「俺たち実は…」

「つ、付き合いだしたのは、最近のことなの!」

会場でも学の口を慌てて塞ぐ瑠奈だった。


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