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無理しないで。

…あれ?ここって?

瑠奈は気がついたら横になっていた。体には毛布がかけられている。

「起きた?」

声がする方を振り返ると、学がマグカップを二つ持って瑠奈の隣に腰を下ろし、一つを瑠奈に渡した。ル・クルーゼのそれは、お揃いのカシス色。手を温めるように両手で包み込む。マグカップの温かさを手に感じながら湯気を眺める。

「続き、見る?寝ちゃったから、止めたんだ。」

学の部屋でDVDを見ているうちに眠っていたのだ。

「あ。そうだね。」

続きを観ていても、学の体温が気になって、ストーリーが頭に入ってこない。

学が瑠奈を抱きよせて唇を重ねる。学の舌が瑠奈の口に入ってきた。

…いよいよかも、しれない。

怖くて体が硬直する。学がびっくりした様子できく。

「どうしたの?」

「エッチするの?」

「は?」

学がびっくりした声を出す。

「普通、するんでしょ」

「怯えて固まってる相手を抱くような男だと思ってるわけ?。」

顔を上げると、学は怒った表情かおをしている。

「普通は、このくらいの年齢としだったら、みんなエッチしているんだよね?」

怒った学にたじろぎながらも、上目遣いに言う。

「そんな普通ことを気にしてたのか。気にしなくていいよ。そんなこと言ってたらエッチするために付き合っているみたいだろ。」

「ごめん。何もわからないから。」

「無理しないで。そのままの瑠奈がいいんだから。」

学は唇を重ねてから、その後、優しく抱きしめ頬をすり寄せる。

「怯える瑠奈を抱くよりも、こうしている方が幸せだよ。瑠奈が自然にそうしたいと思ってからでいいよ。」

…よかった。まだ、怖いんだもん。

頬をくっつけたまま、ホッとする。瑠奈は、学とこうしているのは心地よいけど、まだ覚悟ができていないのだ。


「お願いがあるんだけど…。」

瑠奈を家まで送る途中、学が遠慮がちに言う。

「何?」

「成人式、振袖を着て欲しいんだ。一緒に成人式に行きたい。」

「私が振袖そんなもの着たら、みんな気絶しちまわぁ!」

あまりの驚きに、久しぶりに乱暴な言葉遣いが出てしまった。

「イヤ?」

「キモい!想像つかねーよ!」

「一緒に歩きたいんだけどな。」

「仮装か妖怪と歩くようなものだぞっ!」

学はふわりと肩を抱き寄せる。瑠奈の額に顎をくっつける。

「ここだけ、少し無理して?」


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