お買い物。
「瑠奈って何でも似合う!羨ましー!」
「そう?違和感ありまくりなんだけど。」
春奈は、着せ替え人形のように瑠奈に色々と試着させて、楽しそうだ。しかし瑠奈は、着慣れないタイプの服ばかりなので、何を着せられてもしっくりこないのだ。
「シンプルなもので良いから、少し取り入れるとかわいいよ。」
瑠奈はティーシャツやパーカーしか着ないが、春奈はカットソーやカーディガンそしてスカートをすすめる。
「こないだの服もうまく取り入れようよ。せっかく持ってるんだし。」
学の実家に行ったときの服のことだ。あれっきり一度も袖を通していない。
「そうだね。」
「きっと学くん、喜ぶよ。」
「喜ぶ?なんで?」
「彼女がキレイにしていると、うれしいものなのよ。」
「ふーん。そうなんだ。」
瑠奈は、恋愛関係に関してサッパリなので、春奈の言う意味をよくわからないまま相槌を打った。
「さ。食べよ!お腹すいたー。」
ランチはデザートの充実したイタリアンのバイキングに決めた。二人とも大好きなのだ。
パスタやサラダ、ピザなどをオニ盛りにした皿とともに席に座ると、しばらく食べることに没頭した二人。よほどお腹がすいていたのだろう。二皿目を取ってきた頃に、やっとおしゃべりをする余裕が出てきた。
「おいしいね。」
「ねー。」
こんな一言すら言わずにがっついていたのだ。
「春奈って、エッチしたこと、ある?」
ブッ…!
瑠奈の突拍子もない質問に春奈は危うく、頬張っていたピザを吹き出すところだった。
「な、何よ、急に?」
「彼氏ができたら、エッチするの?」
「もう少し、トーンを下げようか。聞こえたら恥ずかしいよ。」
ザワザワしているとはいえ、聞こえないとは限らない。
「エッチ、するの?」
先ほどのピザが今度は喉に詰まりそうになって、春奈は拳で胸とドンドンしている。
「するの?」
「すると思うよ。」
「じゃあ、春奈は?」
「…まあ、あるわよ。」
声を抑え気味に春奈が答えると瑠奈は不思議そうにする。
「私、学とそういうことするなんて、想像つかない…。」
「今すぐじゃないにしても、そのうち、そういうこともあると思うわよ。心配しなくてもいいよ。その時は、その時よ。」
「自分が裸になるとか、相手も裸になるとか、想像つかない…。」
「あまり考えなくて、いいと思うわよ。さあ、食べようよ。そろそろデザートいっとく?食べてくれないと奢る甲斐がないじゃない。」
笑顔で立ち上がる春奈につられて、スイーツのコーナーに向かう。
慣れた手つきでスイーツを盛る。ミニケーキ、自分で焼くワッフル、パンナコッタ、ゼリー。考えごとをしていても手が勝手に動く。
スイーツを食べていても、先ほどの話題が気になって、うわの空。
「ごちそうさま。」
店を出てから春奈に言う。
「どういたしまして。さっきの話題は、考えすぎなくても大丈夫よ。自然にタイミングが来るわよ。」
「そう?」
心配そうに聞き返す瑠奈だった。




