一生のお願いvs一生のお願い。
『瑠奈ちゃんとのセッティングをしてくれ。頼むから。一生のお願いだ。』
イヤな予感がしたので、あえて拓也からの電話に出ないようにしていたらLINEが来た。
…勘弁してくれ。俺の方こそ一生のお願いだ。
拓也が思っていた以上に熱烈なことに対する驚きと、拓也への罪悪感で学は悶々としている。
…拓也、ごめん。横取りしようとか、裏切るとか、そんなつもりは微塵もなかったんだよ。でも、気づいたら、惚れちまってたんだ。最初にセッティングを頼まれたときは、本当に何とも思っていなったんだ。ああ、なんて言おう。
派手な着メロにドキッとする。画面を見ると、姉の佳奈からだ。
「久しぶり~。その後どう?瑠奈ちゃん元気にしてる?」
「…実はそのことなんだけど…。」
「何?まさか、フラれたの?」
こういうことをあっさり言い放つ姉だが、意外に要領が良いので、何か知恵を貸してくれるかもしれないと、話すことにした。
「いや、そうじゃなくって…。」
「あらあら。そうだったの?それはお友達とのことが気がかりね。」
一通り話すと、佳奈は驚きながらも、相手が瑠奈ということで弾んだ空気が伝わってくる。
「どう思う?友達も瑠奈も両方、手にしていたいと思うことは、いけないんだろうか?」
「そんなことないわよ。どっちも大事なんだから。まあ、そう思うなら、少しでも早く正直に話すべきね。あとは、ご縁ね。」
「ご縁?」
「そう。ご縁。一時的に気まずくなっても、ご縁があればまた仲良くなれるわよ。」
「そうだと良いけど。」
「大丈夫よ。本当の友達だったらね。それより、学校サボって雲隠れなんかすんじゃないわよ。」
「なんでわかるんだよ?」
「小さな頃から、都合が悪くなると雲隠れの術、使ってたじゃない。」
「そうだった?」
「そうだったのよ!アンタが雲隠れするたびに、私が共犯の疑惑がかけられたんですからね!」
佳奈に記憶にはない、苦い過去の話とアドバイスをもらって、電話を切った学は、意を決して、通話ボタンを押した。
…神様!一生のお願いです。拓也に許して欲しいです!




