デート。
「おはよう。」
「お…はよう。」
翌朝、学が迎えに来た。今までも迎えに来たことは何度かあったのに、照れくさい。
「今日は学校、午後からだろ?午前中はデートな。」
「デ…!」
学がそんな瑠奈を見て笑う。学は、いちいち反応する瑠奈を見ているとたまらなく楽しく、愛しいのだ。
瑠奈がメンズの服ばかり着ていることも、口の悪さも昨日までと変わらない。変化と言えば、学が照れる瑠奈の手を取って、歩いていることくらいだ。
「服を見に行こう。」
学の提案で服を見に行く。瑠奈は服が好きなので、リラックスさせようと思ったのだ。行き先はもちろん、メンズの店だ。
「うあー。このパーカーの色、超イイ!」
予想どおり、瑠奈がいきいきとして服を見る。
「買っちゃおかな。」
鏡の前で体に当てる。
「俺も買おっかな。俺も色違いの、買っていい?」
「いいよ。」
お気に入りに出会った瑠奈はご機嫌で、学といるのにすっかりリラックスしている。
…このショップに連れてきて正解だったな。
昨日から緊張しまくりの瑠奈だったので、学はホッとした。
「そうだ。このパーカー、俺からのプレゼントにさせて。」
「なんで?」
「なんでも!俺がうれしいから。それに、偶然だけどペアになったし。」
「あ…!」
言われるまで気づかなかった瑠奈は、学の言葉に赤くなって固まってしまった。そして学はその隙に瑠奈の手からパーカーを奪い、強引に会計を済ませる。
「はい。俺からの気持ち。」
簡単にプレゼント包装をしてもらった包みを瑠奈に渡す。
「なんか…。ごめん。」
申し訳なさそうに受け取る。
「俺が、何かプレゼントしたかったんだから。謝らないで。」
「あ、ありがとう。じゃあ、お礼にランチは私が出す!出させて。」
「いいよ。ありがとう。」
「ところで拓也君どーすんの?昨日の今日だよ?」
「昨日あれから話してないから、まだ言ってない。言ったらしばらく口聞いてもらえないかも。」
「マジか?」
「うん。どう話そう。」
ランチを食べながら、拓也の話題で二人ともずーんと暗い気持ちになった。このあと学校に行くというのに。
しかし、避けては通れない。
「もう、近づかないでくれる?って昨日、言ったばかりなんだけど…。」
「見てた。」
「気まずいね。」
「さすがに昨日の今日じゃあな…。まあ、タイミングを見て話すよ。」
「じゃあ、任せた!さすがにもう、私には近づいてこないと思う。」
「OK。じゃあそろそろ行くか。帰り、今日は駅で待ってる。しばらく、学校で待ち合わせない方が安心だろ?」
「そうだね。」
拓也と会う確率を減らしたい瑠奈としては、学の気遣いがありがたい。昨日のまでより、学の優しさが身にしみる。
「じゃあ、駅でね。」
拓也のことを気にして、学校のすぐ手前で、離れた二人だった。




