今日、何時まで?
『今日、講義何時まで?』
昼休みに学からLINEが入った。
『ラストまで。』
『ドリンクコーナーで待ってる。』
『いいけど、バイトの日だから、ゆっくりできないよ?』
『いいよ。』
いつものやりとりをしていると、向かいに座っている友人、春奈から声がかかる。
「今日も彼氏と待ち合わせ?」
「彼氏じゃないよ。友達だもん。」
「はあ?あんだけ毎日のように一緒にいて、彼氏じゃない?あり得ないでしょ?」
「だって、ホントに彼氏じゃないんだもん。」
「あんた達、ラブラブで有名なんだよ?知ってた?」
「はあ?その方があり得ない!」
瑠奈自身も不思議だと思っているが、学は気を遣わない楽な友達なのだ。
一方、学の方でも…。
「彼女か?いいよな〜。学はあんな可愛い彼女がいて。」
大学付近のファミレス。ランチをしながらLINEでやりとりをしていたら、一緒にいた友人の拓也が言う。
「そんなんじゃないよ。瑠奈、性格は男だし。一緒にいて気が楽なんだ。」
「知らないのか?お前たち、有名なカップルなんだぞ。」
「あんな男みてーな奴とカップルにされてたまるか。」
「本当のところ、どうなんだよ?」
「何が?」
「お前、そばにいるために友達という立ち位置をキープしてるんじゃね?」
「バカ。そんなんじゃねーよ。」
…俺が瑠奈に気があるなんてあり得ない。あり得ない。
「じゃあさ。」
拓也がイタズラっぽい表情で切り出す。
「僕が瑠奈ちゃんにアプローチしても、構わない?」
「いいけど。お前、趣味悪いな。」
「お前の方がおかしいぞ。知らないのか?瑠奈ちゃん人気なんだぞ。お前の存在があるからみんな近づかないけどな。」
「世間には瑠奈が女に見えるのか?」
「だーから!見えないお前の方がおかしい!」
拓也の顔を見ながら学は悩んでしまった。
…瑠奈が可愛い?モテる?大食いだし、大口あけて笑うし、あぐらかいて煎餅をバリボリこぼしながら食う奴だぞ。俺の部屋で寝っ転がってビール飲んではイビキかいて昼寝するし。男というよりはオッサンだぞ。
学は本当のことを拓也に話そうかと思ったが、拓也の夢を壊しては、という思いと、瑠奈への友情から、話すのをやめたが、やはり釈然としないものがあった。