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ありがとな。

「今日はありがとな。おかげで見合い話も断ってもらえそうだよ。」

「お役に立てなくて、ごめん。かなり不向きな役だった気がする。…お姉さん、優しいねー。ああいう姉ちゃん欲しかったなー。」

帰りの電車での会話。ホッとして、瑠奈の口数が増える。

「ところで、拓也のことだけど…。」

「断っておいて。ああいうの苦手。拓也くんは、いい人だと思うけどね。」

「そっか。断っておくよ。」

「がーっ‼︎早く着替えたい!足が気持ち悪い!」

学がクスッと笑う。“女装”は、ドキドキするほど似合ってたけど、やっぱり瑠奈は、このままがいいと思う。学は男前な瑠奈の隣が居心地がいいのだ。


「ウチで着替えたら、メシ食いに行こう。何がいい?こないだのお詫びと今日のお礼で奮発するぞ!」

電車を下りて、歩き出したとき、学が元気よく言った。

「焼肉食べ放題!今度は思い切り食いたい!」

瑠奈がニヤリと笑みを浮かべて言うと、瑠奈らしいリクエストに学も笑った。

「いいね。行こう行こう!スタミナ補給しないとな。」

「やった~!腹減った~!」

瑠奈の服装に相応しくない言葉遣いに思わず学が吹き出す。

「ナニ笑ってんだよ。」

「今の服装と言葉遣いのギャップがウケた!」

「そんなこと言うならもう二度とこんな服、着てやんねー!」

「言わなかったら着るの?」

「着…ない!」

顔を見合わせて爆笑する。


学のマンションで急いで着替えたら、走り出さんばかりの瑠奈。

「そんなに慌てなくても大丈夫だよ。」

またしても学に笑われてしまう瑠奈だが、気にしちゃいない。

「腹減ったもん!メシメシ!」

「これじゃあ、やんちゃな弟だな。」

「ほっとけ!」

…仲直りできて良かった。こいつと友達で良かった。

それぞれがひっそりと安堵した夜の道だった。

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