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女装、できました。

「はい。これでよし、と。学くん、いいわよ。」

春奈の声で部屋に入ると、まるで別人のような瑠奈がそこにいた。学のマンションで、“女装”を済ませたところなのだ。ステキに変身した瑠奈だが、慣れないスカートに落ち着かない様子だ。


「会わせたい女性ひとがいる。」

実家の母親に電話で告げたところ、すぐの週末に会わせることになったのだ。そして、服のセレクトからメイクまで、春奈に事情を話して、手伝ってもらったのだ。

春奈には、学の見合い話にずいぶん驚かれ、また、本当に付き合っているわけではないことにも驚かれたが、スタイリスト役を快く引き受けてくれた。


「瑠奈、かわいい!…あ!学くん、見とれてる〜。」

「バカ!そんなんじゃないよ。」

学が顔を赤い顔をして言い返す。

「照れなくてもいいじゃない。黙っていれば、ステキだもの。」

春奈がイタズラっぽい笑顔で言った。

「瑠奈ちゃん、ステキだよ。今度、僕とのデート…イテッ!」

なぜか拓也も駆けつけているのだが、今の一言で学に小突かれた。

「瑠奈ちゃん、フリだけだよね?」

拓也は、このまま学と瑠奈が本当に付き合ってしまうのではと心配しているのだ。

「瑠奈、お言葉にお気をつけになってね?」

「わか…はい。春奈さん。」

“わかってるよ!”と言いかけて、慌てて訂正する。何より、瑠奈は日頃から“黙っていればイイ女”なのだ。そして今日は、特にイイ女。特におしとやかにしないといけない日。

「あ〜!足が落ち着かない!」

相手の印象や、瑠奈がスカートに不慣れなことを考えて、ロングスカートにしたので多少のことは大丈夫な、はず。

「いい?今日は、“教師の家系に育った、おしとやかなお嬢さん”よ?演じきるのよ!」

「はい。春奈さん。」

ぎこちないが、なんとか言ってみる。

「行ってらっしゃい!また、話を聞かせてね。」

「瑠奈ちゃん!今度は僕と…。」

言っているうちにプシューっとドアが閉まり、春奈と拓也が駅のホームで見守る中、学と瑠奈は出発していった。


電車が出発するのを見届けて、春奈は拓也に声をかけてみる。

「お腹すかない?」

「そうだね。」

遅めモーニングの時間のミスド。席に座る。

「初めまして、だよね?」

「そうね。顔は見ていても、話すのは初めてね。」

「改めまして、江口拓也と申します。」

「花田春奈と申します。」

そう。お互い、友達の友達なので、顔はよく知っていたが、話したことは初めてなのだ。

「瑠奈ちゃん、どうなっちゃうのかな…。」

「瑠奈?無事を祈りたいわね。」

「そうじゃなくて。フリだけじゃなくなったら、どうしよう。」

「そうだったの?瑠奈に伝えた?」

デートに、なんて言っているのは冗談だと思っていた春奈はびっくりする。

「軽く誘ってみたんだけど…。」

「どんな風に?」

「お酒の席だったんだけど。今度は学抜きで会ってって。そしたら“イヤです〜!”って。」

「それはビミョーね。それにもっとキチンと言わないと気づかないわよ。かなりの鈍感だから。」

今日はコーヒーがやたら苦く感じる拓也だった。



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