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こんなに近くにいるのに。

「だって~。瑠奈に冷たくされて可愛そうだったんだもーん。」

時絵はニコニコだかニヤニヤだかわからない笑顔でリビングにやってきた。

「ごめんなさいね。口の悪い娘で。」

「いえ…。」

学は困った表情かおで下を向いている。怒りが冷めたわけじゃないけど、腹いせに遅刻をさせる気はない。

「時間、いいの?私を待ってると遅れるよ?」

「いや、今日は…。」

「じゃあ、瑠奈あなたが遅れないように動いてあげなさいな。」

時絵は掃除機を手にニヤリと笑う。洗濯もだが、時絵の家事を妨害することは、悪夢を見るに等しいのだ。この場合、掃除機が凶器になることを瑠奈は長年の経験から知っていた。それに何より、瑠奈の母である。今でこそ楚々とした奥様の顔をしているが、若い頃の武勇伝があっても、おかしくないだろう。

「ハイハイ。わかりましたよ。行ってきまーす。」

仕方なく玄関に向かう瑠奈と、慌ててついていく学を、時絵は笑顔で見送る。

「行ってらっしゃーい。」

瑠奈が大きくため息をついてとぼとぼと歩く。学は顔色を窺うようにそっと隣を歩く。

「何だよ?そんなに出会いが欲しいなら、会ってみれば?見合いだって一つのチャンスじゃん?他人に“お見合い”させてる場合じゃないだろが。」

顔色を窺う学にイライラして、悪態をつく。学はそれでますます落ち込んだ表情かおをする。それを見ると、罪悪感が沸いてくるが、怒りは収まらない。

「本当に悪かった。隠さずに相談するべきだった。」

瑠奈は何を言い返すでもなく歩いていく。学も一緒に歩く。イライライライラ…てくてくてくてく…。

「…あ。」

気付くとミスドの前に着いていた。

「座って、話そう。」

返事をするわけでもなく、まだ険しい表情かおをしている瑠奈の腕をひっぱって、何とか、店に入った。

「先に座ってて。」

瑠奈を座らせて、学は2人分の注文をする。瑠奈の好みを把握しているだけに実にスマートだ。瑠奈はその様子を席からボーっとして眺める。

…ふーん。優しいトコもあるんだ。


「お待たせ。」

学がトレーを持って席に座る。

「…あり…がと…。」

お皿には、お気に入りの物と、期間限定モノの中でも瑠奈の好きそうな物がたくさんのっている。

「あー!コレ!」

思わず声を上げる。数日前、売り切れで食べられなかった物がのっていたのだ。

「こないだ来たとき、売り切れてたから…。」

「覚えててくれたんだ。」

「こんなに近くにいて、瑠奈の嫌がることをわからなくて、ごめん!」

学が気を遣っていることをわかりながら、意地になっていた瑠奈の気持ちが一気にほぐれる。

「私も、怒りすぎた。ごめん。」

…やっぱり友達っていいな。

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