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兄貴。

「はぁ?兄貴っぽい?」

「うん!姉貴っていうより兄貴!」

浩司が嬉しそうに言う。浩司によれば、“普通の姉貴”というのは、オンナオンナしていて近寄りがたいのだとか。

「ふーん、そうなんだ。」

瑠奈はあまり興味なさそうに相槌を打つ。

「そーだ!浩司。ポテトチップスない?食いたい!」

「あー。あるよ。持ってくる。」

浩司が出してくれたポテトチップスをつまむ。あぐらをかいて、ビールを飲む2人は、まさに“兄弟”である。

「浩司って、彼女いないの?」

「いねーよ。俺、モテないもん。姉貴は?時々迎えに来るあいつ、彼氏?」

「学のこと?ただの友達だよ。」

「マジで?彼氏だと思ってた。」

「あー!そのテの話題もあいつの話題もやめて!」

「ケンカでもしたの?」

「んー。そうじゃねーけど、ちょっとね。」

言ってるそばから、瑠奈のスマホが鳴る。学からの電話だ。しかし、今は話したくない。

「…出ないの?」

「出ないの!」

…出たくない。今は話したくない。わかっていた。異性の友人間というのは、どちらかが相手を見つけたりするとジャマになることも。

「浩司!」

「なんだよ?」

いきなりの瑠奈の声にビクッとする。

「もう一本飲め!オカンには黙っといてやる!」

「はい…。」

勢いに飲まれて、差し出されたビールを受け取る。

「ホラ!乾杯すっぞ!」

「はい…。」

浩司がプシュッとプルタブを開けるのを見届けた瑠奈が叫ぶ。

「兄弟の契りに、カンパーイ!」

浩司にしてみたら、瑠奈はもう兄貴だかオヤジだかわからない。酔いがまわり出した頭でぼんやり考える。

…高校生の弟に酒を飲ませる姉を持って、俺は幸せなんだろうか?高校生の弟に「もっと飲め」と酒をすすめる姉貴は、良い姉なんだろうか?

また瑠奈のスマホが鳴る。きっと学だろう。

「やっぱり出た方が…。」

「いいの!今日は話さない!話したくない!」

そう言ってぐいっと飲み、ぷはーッとやる。

…姉貴のこういうの、ずいぶん前にあった気がするな。

浩司の脳裏にかすかな記憶がよぎる。いつのことだったろうと考えているうちに、カクンと意識が途切れた。





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