ドラゴンと雪【400文字小説】
大きな体躯を持つドラゴンは雪が降りしきる中、空を飛んでいた。
目的はその雪が降る平原の向こうにある山の中腹にある住処なのだが、寒さが苦手なドラゴンの進みは遅い。
その背中に乗る男もまた、上空の寒さに震えていた。
「まったく何なんだ。この辺りは雪なんて降るような場所じゃないだろうに」
普段は雨もあまり降らないような枯れた大地での異常気象に男も疑問を持つ。
だが、なんとなく気になって下を見下ろしてみれば、そんな些細な疑問などどうでもよくなるほどきれいな風景が広がっていた。
上空があまりに寒いからという理由で低空飛行をしているのだが、それが功を奏し、地上の雪景色がよく見えるのだ。
普段は茶色の大地が広がるそこはすっかりと白銀の世界になっていて、サボテンすらも雪をかぶっている。
異常な風景なのにそれがとてもきれいだと感じてしまった。
結局、原因はわからなそうだったが、その風景だけ心に留めて、男はドラゴンを急がせた。