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小話集

部下

作者: モカ笛

 今は戦争が起こっている。

 俺はとあるボスの部下をしている。俺達のボスは変なお方だ。部下が一人二人死んだだけで悲しまれる。少し不格好だが墓も立てたりする。本当に変なお方だが、だからだろうか、皆ボスを慕っている。俺もそんなボスに惹かれて部下に入ったのだ。ボスのアジトの中は戦争の起こっている外と違い、平和である。部下は遊んだりさえしている。当然訓練している者もいるが。たまにボスも仕事を終えた時に混じって遊んでいる。戦うのは怖いが、帰れば楽しい日常が待っていると思えば怖くなかった。そして何よりボスのお役に立てることが嬉しかった。

 数ヶ月して俺は第4班の隊長になった。ボスともよく話すようになった。直接話してみると、やはり面白い人で、皆が慕うのも良く分かる気がする。楽しみもあったが、その反面、隊長として戦場に出る事が多くなった。時には指揮をとるだけでなく、直接敵の軍と戦う事もあった。もし、俺が死んだら、やはりボスは悲しむのだろうか。アジトには、たくさんの部下がいる。だから本当は数十人死んだところで対した損害にはならないはずだ。俺は一度その事をボスに伺ってみた。


「友達が死ぬのは、まあ、悲しい事だな」


 ボスは悲しそうな顔をしてそう言った。友達。ボスが言うには部下は皆、ボスにとって友達なんだそうだ。とことん変なお方だな。いや、だからこそ皆ここまでついてきたのだろう。ボスの為に命を懸けて必死に戦うのだろう。ボスも、本当は戦争なんてしたくはないらしい。だが、戦わねばられる。難しいものだ。

 俺と俺の班はボスのアジトから少し離れた所に派遣される事になった。ボスのもとを離れるのは寂しい。俺達はボスのもとに生きて帰れるだろうか。戦いはますます激しくなってきている。

 ある日、急に警報がなった。出動しなければならない。

 ボスの為に戦う。ただそれだけだ。




 だが、負けてしまった。敵の挟み撃ちに遭い、俺以外は全員死んでしまった。俺も、片目と片腕がもう使えない状態で、あと多量出血でもうすぐ死にそうだ。このまま死んだら楽だろうか。でも、俺は力を振り絞って敵を一人でも減らそうと飛びかかった。ボスの、敵を。


「もし、俺に生まれ変わりがあるとして、戦争が終わっていなかったら。戦争が終わるまで何度でもあなたの部下になるって誓います」


 そう心に誓ったあと、俺の目に映る映像はそこで途切れた。




 きっといつかまた、違う形でもボスの部下になります。



20XX年

第4班隊長:敵との交戦に敗れ、死亡。 

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