あおい金魚
ふかいふかい海の底 私は一匹で暮らしてる。
真っ赤で綺麗だった私の体は、もう深海の色に染まってる。
一匹でも寂しくなんかない。寂しくなんかない。
私の住みかは暗いけれど広いもの。
食料だって岩のお皿に毎日盛られてるもの。
金魚は群れで暮らすもの。
だけど私は一匹金魚、群れなんて作らない。
群れなんて作るのは弱いから。そう弱いのよ。
それに、真っ赤な金魚が群れで川で泳いでたら目立つじゃない。
いつ空から鳥が飛び込んでくるか。
いつ動物に食べられてしまうか。
分かったもんじゃないわ。
ある日、私が群れていた頃。
私の夫と私の子供たちが突然いなくなったのよ。
私が一人でみんなのために餌を探しに行ってる間だったわ。
夫が子供たちを見ていてくれるって言ったのよ。
だけど、帰ってきたら誰もいなかったわ。
私が見たのは、どこから来たのか知らない何匹かの小さな魚の頭の骨と赤いむなびれ。
怖かったわ。
だけど、夫や子供たちが食べられていなくて良かった。
だって、頭だって夫はこんなに大きくないし、子供たちのむなびれはもっと赤いわ。
それに、子供たちは私に似て泳ぐのが速いのよ。
そうよ、そう。私の家族じゃないわ。家族じゃない。きっと。
だから、みんなを待ったのだけど、きっと先に行ってしまったのね。
薄情者よね。そうでしょう。
それから、私は西に西に進んだの。
そうしてここを見つけたの。
私の住みかは暗いけれど広いのよ。
食料だって岩のお皿に毎日盛られてるのよ。
それに、いつだってみんなの元気な姿が目に浮かぶわ。
寂しくなんかない。寂しくなんかない。