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「あのさ翔」

 さりげなく相手国の情報を語りだした事に危機感を覚えたので、止めた。

「あんた、私に身代わりだの何だの言うけど、私まだOKなんて言ってないんだけど?」

「いやー、良いって言うしかないと思うよ?」

「なんでよ?」

 にや……と人の悪い笑みを見せた翔に、嫌な予感がした。

「召喚するときの契約事項として『レーン国にて国王謁見と書状の手渡しが成功を収めること』ってなってるからだよー」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉」

 なんて酷い!

 私は、物語の記憶の中から召喚されるときの手順を思い出していた。

 

 一、召喚する魔術師

 二、対象となる相手を呼び出す為の魔方陣

 三、召喚するに当たっての、世界に示す契約


 これらが揃って、初めて異界からの召喚が成功する。

 たまにウッカリ発動しちゃうこともあるらしいけどね。さじ加減がまだ難しい魔術師若葉マークの人がやっちゃうことが多いらしい。だから異世界召喚物語が多いのも頷けるんだけど。

 先にあげたウッカリな召喚は、契約する前に発動しちゃったりするんで契約はされていなく、適当な場所にポンと放りだされ、ノーヒントで自力で何とか生きて行かなければならない。

 うまいこと成功して、魔術師にお金積んで元の世界に戻れた人も勿論いる。そういう人が元の世界で物語書いて出版したりするんだけどね。

 一番厄介なのが三番目の契約だ。

 キッチリ契約込みで召喚された者は、その契約が果たされない限り元の世界に戻ることはできない。

 世界を相手にした契約だから、絶対なのだ。

 ――駄目じゃん!

 私は会社に行く所だったのに。新しい会社……はじめが肝心の初日だったのに!

 早く戻らなきゃいけないのになにその契約!

 私の心配をもちろん見越している翔は、甘えた声で呟く。

「成功したら、コッチに来る直前まで時間軸戻すよ?」

 うっ。

「成功報酬も、ちゃんと日本銀行券でねーちゃんの希望額を国家予算からまわすよ?」

 うっ。

「身の危険は絶対無い。その辺もちゃんと手配するよ?」

 うっ。

「まあ……せっかく小説の舞台の異世界に来たことだし、旅行気分で楽しまない?」

「……」

「ねーちゃん。頼むよ」

 じっと私を見つめる翔。

「わ……分かったわよ! 行けばいいんでしょ!」

 ヤケクソ気味に了承した。基本的に私は、翔のお願いに弱いのだ。その辺わかってるでしょうに、ずるいわ翔め!

「ありがとう、ねーちゃん」

 翔は満面の笑みを浮かべ、私は天井を仰ぎ見た。

 あー、この笑顔にだまされるんだよな、いつも!

 弱みにつけこまれた自分も、つけこんだ弟も、昔からのパターンを今回も繰り返すのだった。





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