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 ――なんなの、あれって。


 虚脱感を覚えつつ二人が消えたドアを見ていた私に、ロゥが近くの椅子に座るよう示す。

 

 「ウンノ、暫く待て。その間に皆を紹介しよう。――とはいえ、この惨状ではな……」


 つられて私も辺りを見渡すと、そこはもう混沌とした状況が広がっていた。大体三十人ほどいると聞いていたけれど、ある者は床に伏し、ある者は泣き、ある者はうずくまり壁に話しかけている。

 何があったんだ? 聞くのが怖いけど!

 そんな中、比較的落ち着いているハルが暗い影を背負った顔でやってきた。


 「やあウンノ。すまんなこんな状態の時に」


 ぎゃー! こんなハルさんも素敵すぎる! 色男はどんな姿も絵になるのねっ。

 色気は万能であると確認し、先程までのモヤモヤさが少し薄れた。


 「流石に私ではアイツを抑えきれずにこの有様だ。みろ、バッツを」


 そう指をさされた所を見れば、バッツが部屋の隅っこで膝を抱えて涙ぐんでいる。その目は、どこか一点遠くを見つめ、時折鼻をすすっていた。


 「一体何をされたんですか?」


 ハルは溜息混じりに『災厄』が何であるかを私に教えてくれる。

 

 「アイツはな、機嫌が悪いと周りの人間に八つ当たりをして気分転換を図るんだ。その方法がえげつなくて、こう……人の心の傷を抉り、広げて、塩を塗りこめる。それはそれは一人ずつ丁寧に、時間をかけて追い詰めて、落とす。ある程度耐性が出来た私やロゥならばこの程度で済むんだが、バッツなど新人は今回の『災厄』は二度目で、まだ前回の傷が癒えてないからな……」


 そんな八つ当たりの被害者は御免被る! 怖いよ、怖すぎるよー!

 そんな人の弟設定って、すごくない?!

 道理でジェネが「変人」の一言で切って捨てるわけだ。


 「この様子だと今日は七番隊、使い物になりませんね。『災厄』特約で本日特休を取れる様、後程団長に申し入れてきます」


 「特約とはな、まあ……この様な状態になった場合に休みがもらえる制度があるんだ。年に数回どこかの隊がやられるから、ある意味『お互い様』で協定を組んである」


 ロゥが皆に聞こえるように告げた後、ハルが私に説明をしてくれた。

 そんな福利厚生まであるんだ! どんだけだよイル・メル・ジーン!


 「伏してても座ってても構わない。皆聞け、ジェネシズ隊長の従者としてここにいるウンノが付く事になった。不慣れな所も出てくるだろうから、皆で協力して手伝え。以上だ――あ、いやもう一点。イル・メル・ジーンの非公式な弟であるからそのつもりで接しろ」


 途端に部屋の空気が一層暗くなった。

 うう、ゴメンナサイ姉(仮)のせいでっ。


 「ロゥ、ハル、ウンノ。話がある、入って来い」


 二人きりでの話が終わったのか、ジェネが扉を開けて私達を呼ぶ。

 きっと、潜入の話がされるのだろう。


 ……でもさ。二人っきりでなんの話だったのかな。


 私はてっきりイル・メル・ジーンって男だと思い込んでいた。なのに実際会ってみたら超絶美女で。ジェネしか暴走を止められないというのは、むしろ二人いい感じってこと? 密着度といい、ジェネもまんざらではなさそうだったし、美男美女でお似合いで――実は恋人同士だったり!?


 そこまで考え至り、急に胸の辺りが、きゅうっと締め付けられる気がした。

 え、え? なんで私こんなに動揺するわけ?


 ジェネに、相手が、いても、おかしくない。


 再び二人が寄り添う姿を思い浮かべると、同じように胸が苦しくなって、重くなる。大根おろし金のチクチクを触ったかのようにざらついて、痛い。

 そっと胸に手をあてジッとして、その正体を探ろうとしていたけど、それを不審に思ったのかハルが「ウンノ行くぞ?」と声を掛けて促す。

 慌てて立ち上がり、漠然としている正体を調べるのは後回しとした。




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