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 団長の部屋を出た後、準備の為に私とジェネは近衛騎士団七番隊の詰所へと向かった。


 この国の騎士団は、赤・青・黄・白・黒と五色に分かれており、それぞれ三番隊ずつ組まれている。ジェネ達七番隊が所属しているのは「黒騎士団」であり、よって制服も黒で統一されている。

 第三層を守る近衛騎士団は、その五彩近衛とも呼ばれ、色ごとに交代勤務をして警備にあたるらしい。

 この様な体制が出来たのは大戦以降で団長が整備したというので、流石に私は知らない。


 ちなみに聞いた話だけど、一番隊から十五番隊まである近衛騎士団の順位があり、その順位は一年に一回王によって決められるそうだ。戦績が良いとか、功績によるものだとか、そんな感じで。

 ジェネは…… 翔が前に剣の腕はこの国最強と言っていた。それなのに七番隊ってことは出生の事が色々絡んでいるから可もなく不可もなく七番ってとこらしい。



 「ジェネがあんなに怒る所、初めて見ました」


 回廊をテクテク歩きながら、少し前を行くジェネに話しかけた。


 「心配いただくのは嬉しいんですけど、今ここに疾風と焔がいるんで何とかなると思うんです。それに、ちゃんと女なんで誤魔化す必要が無くなるというかなんというか……」


 なんだろう、この不思議な感じ。

 結果オーライなのに言い訳してるかのような気分。うん、とりあえず。


 「ごめんなさい」


 立ち止まってジェネの服の裾をツンと引っ張り、謝った。


 「勝手に決めてごめんなさい」


 「いいんだウンノ、先程の事は俺も謝る。怒鳴って悪かった」


 あれ? また二人して謝ってるし!

 今朝方と同じ状況になり、お互いに笑みがこぼれた。

 

 「ウンノ、俺はお前を危険な目に合わせたくないんだ。確かにウンノ程あの場所に入れる人物は居ないだろうということも、理性では充分に理解している」


 そういって私の頭をポンと軽く叩き、私を見つめた。その少し熱を持った視線に居心地が良いのか悪いのか、モゾモゾした気持ちがする。


 「しかし理性では理解できても感情は――」


 「ここに居ましたか隊長!」

 

 何か言いかけたジェネを遮る様に、副隊長? のロゥが回廊の先から現れた。駆け足でやってくる姿を余所に、隣から「チッ」と舌打ちの音と不機嫌のオーラが漂ったのは気のせいでしょうか?

 あ、あのー、ジェネさん??


 「何の用だ」


 隠しもしない苛立ちを声に乗せてロゥに問うと、若干戸惑った様子をしながらも答えた。


 「来たんですよ『災厄』が! 隊長でしか抑えられません!」


 災厄?!


 その言葉を聞いたジェネは、「何でこう、次から次へと……」と肩を落とした。


 「どこに現れたんだ?」


 「はっ、七番隊詰所に。今はハルドラーダが抑えています」


 「分かった、急いで向かおう。ウンノ、少し走るぞ」


 「は、はいっ」


 何事か分からないけれど、とにかく詰所へと 急いだ。



*****



 ドアの向こうからは、とても穏やかではない音が洩れ聞こえる。


 (ちょっと、ジェネ、一体なんですか??)


 息切れしながら小声で尋ねると、眉間に皺を寄せながら扉の把手に手をかける。


 (イル・メル・ジーンだ。いつ来るか分からない上、傍若無人に振舞うから『災厄』以外何者でもない)


 そして、そっと扉が開かれた先に、真っ赤なドレスが目に入った。


 ドレス?


 そのドレスの主を確かめようとそっとジェネの後ろから覗き見ると、そこには体に張り付くようなドレスに身を包む『妖艶』という名がピッタリ当てはまる美女が立っていた。長いスラリとした足、滑らかな曲線を描く尻、細く括れたウエストライン、豊満さを隠さず、むしろ開放してあられもない胸。

 ゆっくり視線を上げていくと、最後にこれ以上にない整った顔が、豊かに波打つ赤髪に彩られていた。

 

 う、うわー、何この超絶美女!


 私が美女に釘付けになっていたら、ジェネ目掛けてその美女が飛び込んできた。


 「ジェネ! いやーん待っていたのよっ! どこ行ってたの?」


 見事な肢体を惜しげもなくジェネに押し付け、その手はジェネの頬をそっと撫でる。


 むかっ。


 「早く会いたくて、急いで帰ってきたのよ~? 寂しかった? うふふ」


 いらっ。


 美女が一言ある度、なにか不快な感情が湧き出す。なんだこれ?

 その正体を探ろうとしたけど良く分からなかった。うーん、まあいっか。

 余計なことは後回しにするとして。


 ジェネは纏わり付いてきた美女をベリッと剥がし(ホントにこんな表現の通り)、表情の見えない顔で落ち着いて口を開く。


 「相変わらずだな、イル・メル・ジーン。お前の弟を連れてきた。話があるから別室にいくぞ」


 ジェネの後ろに控えてる私を指し示し、それで視線を動かしたイル・メル・ジーンは「まあっ」と嬌声を上げて艶やかに笑い、ジェネの腕を取って「では参りましょうか」とサッサと行ってしまった。

 ジェネは引き摺られながらも後ろを振り返り、私に口の動きだけで「ちょっと待ってろ」と伝え、二人で隣室へと消えていった。




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