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「お、王様!?」
アッサリという翔に、もう本日何度目か分からない程驚いた。
ビックリ選手権あったら多分私優勝間違いなしだ。
「王様て、ラスメリナ王国の?」
「うんそうだよー。まあ色々あったけど、これこそうーんと長くなるから割愛するとして……」
「しないでよ!」
「まーまー。とにかく色々荒れている所が、僕が王様になったことで、なんとか国の秩序も戻ってきたのさー。そこでなんだけど」
一旦言葉を切り、急に真面目な顔になった。
翔はちゃらんぽらんで普段どこ吹く風を装っているけど、実際のこいつは策士だ。こういうときの翔は本気なので、こちらもちょっと居住まいを正す。
「隣国との関係がね、ちょっとアヤシイんだよねー。国を立て直すのに流石の僕も手一杯で、周辺国への対応を最低限しかできなかったんだ。ってことで、ねーちゃん?」
「ここで私の名前がでるの!?」
私が出るタイミングじゃないだろう、全くの異世界人だし、だいたい今来たばかりなのに!
きっとやばいことだ。
危険な香りがプンップンする!
両手で耳をふさごうとしたけど、見越してたのか、ガシッと抑えられてしまった。
翔がずいっと身を乗り出して、厳かに告げられた言葉は。
「ねーちゃんには僕の代わりに、レーン王国の王様に謁見してもらいます」
「はあ!?」
「ま、ぶっちゃけ身代わりだね。アハハッ」
「軽く笑うな! いや、バレるでしょう! 大体私女だし、顔も双子の割にあまり似てないし!」
「ばれないよー。男の格好してれば大丈夫でしょ。大体僕の顔だってこの国でもあまり広まってないし? 黒髪黒目って位だからね、知られてるの。黒と黒ってのは珍しい色の組み合わせみたいよー? まっ、それっぽく見えればオッケーオッケー」
それに、と翔は付け加えた。
「なによりジェネシズがついているから。安心して?」
そう、気になってたジェネシズさん。ずいぶん気を許しているようだけど、あの人って一体?
「ジェネはね、レーンの国の近衛騎士団第七番隊の隊長してて、今回僕を迎えに来た騎士なんだよー」
「レーンの国の騎士って……『精霊姫と騎士の旅』っていう物語に出てきたアレ?」
再び覚えのある物語をあげると、翔は嬉しそうにうなずいた。
「さっすがねーちゃん話が早い! その物語で合ってる合ってる。えっとレーンの近衛騎士団は全部で十五隊あって、むちゃくちゃ騎兵戦がうまい所なんだよなー。ジェネは多分あの国最強だと思うよ?」
そ、そうなんだ……
抱えられたときのあのしなやかだけど厚みのある体は、武道をやるものだとは思っていたが騎士ですか。足音も立てず、しかしあの圧倒的存在感は黒豹を思い起こさせた。
「まージェネも色々あって七番隊に甘んじているんだけど、これまた割愛。本人に聞けたら聞いといて?」
「う、うん……」
翔のちょっと苦味を感じた瞳に、これ以上は話したくない雰囲気を感じ取った。
「ジェネを、この世界で僕は一番信用しているんだ。ねーちゃんを任せるならあいつしかいない」
ちょいまって。
もう行くって決まったかの様な言い方しないでよね、翔。