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 弟!?


 玉座に座る若干一六歳の王。在位は二年になるらしい。

 傀儡政権であり、いつだったかジェネが『国の強欲なくせに小胆な佞臣共』と吐き捨てるように言ったのはこういう事情があったからか。心底嫌いだったんだろうね。

 でも、王の話をしたときは表情がちょっと違ってたような?精霊が不安定だという話も、どこか憂いてみえた。

 その間にも手作業は進む。

 料理に使おうと、幾つかブレンドしたハーブをガーゼに包んだ。

 パンやスープに使おうと、ローズマリー・ローレル・タイム・オレガノを一まとめ。もう一つはブーケガルニとしてローレル・パセリ・タイム。煮込み料理にピッタリなんだよね。

 

 「レーン国王のお兄さんですか……。よく王位継承権放棄できましたね?」


 単純にそう思ったんだけど、ハルは苦虫を噛み潰した顔をした。


 「それは……。若の母親は城の下女だったからだ。洗濯女で、たまたま陛下と出会い愛を交わされ…… 若が生まれた。そもそも、政略結婚ではあるが王には正式な妃がおられ、王妃は非常におとなしい性格でその件について何ら意見は無かったが、その父親が……。怒り狂わんばかりに荒れすべて巻き込み王宮は乱れた。身分の事もあり相当虐げられた産みの母親は死に、王は見て見ぬ振りをなされ、第一王位継承者であるにも関わらず日陰の存在として若は暮らした。それから十年後、王妃が懐妊したんだ。あとは……想像がつくだろ?」


 「……」


 口の中がカラカラに乾いていた。

 本や映画では『よくあるパターン』として捉えていたが、実際目の当たりにすると心が拒絶する。

 おそらくではあるが、国王と王妃ならば血筋は一番よろしい。下女との子などサッサと廃しようとでもなったのだろう。身の危険を感じてジェネは『王位継承権放棄』をしたのではないだろうか? そして、どこか遠くに……って、今騎士団にいるのはなんでかな?


 「それで大方合ってる。その当時若は十歳でな、私は乳母をしていた息子であり、乳兄弟として一緒にいたんだ。よくぞ若は耐えなさったと思うぞ。死んだ方がマシだという状況下で私は無理にそれを止めたが、放棄なされるとは思ってもみなかった。……たった十歳の子供がそう決断したのだぞ?」


 当時の怒りを思い出し、ハルは拳をベッドに叩き付けた。そしてその拳を今度は大事そうに反対の手でそっと包んだ。


 「重臣が集まる朝議の席で、一人王に向かって放棄すると宣言し、そのまま私の母の田舎である遠く離れた村へと移ったんだ」


 私は、知らない。知らなかった。

 むしろ、積極的に「知ろうとしなかった」のかもしれない。

 ここまで関わる事になるとは思わず、さっさと帰るつもりでいたから。

 本当に軽い気持ちで引き受けたんだな、と恥ずかしくて堪らない。


 ジェネシズ。


 あなたは、そんな過去を持っていたのね?

 

 肉親の情もなく、ひっそりと生き―――――表情を無くすまで。



 その後のことについて、ハルは続けた。

 一八歳の頃再び王都へ戻り、一般兵と同じように試験を受けて今に至る、と。

 どうして騎士に?と思ったが、ジェネは弟を守る為だけに近衛を志願したのだという。わざわざ切り捨てた場所に舞い戻る理由が全く分からなかったが、ジェネは「誓いを立てたから」との一点張りで答えない。

 一人行かせる訳にもいかず、ハルも同じく騎士への道へと入ったらしい。


 のんきな自分に腹が立つ。下唇をぎゅ、と噛む。

 そんな自分に気付いたのか、ハルは立ち上がって近寄り私の肩を叩いた。


 「これは過去の事だ。ラスメリナの王の事は知ってるか? あの「竜帝」とお知り合いになられてから今の若は大分変わられた。人と関わる事も外へ目を向ける事も進んでなさる。親身になって目を掛けてくださる人も居られるから、そう悲観する事もないんだぞ?」


 「は? 竜帝!?」


 「ラスメリナ王カケル様の二つ名だ。何だ知らないのか、あの国に滞在してたのだろう?」


 あの翔の事なんだろうけど、全く同一人物だとは認識できない。それに、翔の二つ名にしては立派すぎやしないか?


 「あの方は若が窮地に陥った時、突然現れて……ああ、実際現場を目にしてからの方が分かるかな。クリムリクスに付いたらまた話してやる」


 そう言って扉を開け「下で茶でも飲もう。――ずっと二人きりだと若が気にするだろうからな」と、先に下りていった。気にするって何だろうと思いながら、山になったハーブを片付け、私も下りた。





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