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「えっ」
ジェネシズが精霊姫、と言ったことにも驚いたけど。私なんかが本当に受けていいものなのか。
その不安を伝えると「貴女がいい、と来てくれたんだろう? ウンノを選んだ精霊達に失礼だと思わないのか」と、あっさり言ってのけた。
「――本当に、あなた達双子には驚かされてばかりだ」
うっすら苦笑を浮かべ(うわ!)軽く髪を掻き上げると、手を伸ばして私の頭をそっと撫でた。
華奢な作りのガラス細工を撫でるよう、優しく温かい、それがとても気持ちが良い手の重み。
二回撫でられ、手を引かれてしまった時に「もっと」、と口をついて出そうになった。
……もっと、撫でて欲しいだなんて。
こんな気持ち、こんなねだるような気持ちは初めてで。
この人の国で、私が役立てる事なら。
この人の為に、役に立てる事なら。
「分かりました。私に何が出来るか分かりませんが、とにかく契約してみます。――おいでみんな!」
抱っこした風の子を地面に下ろし、四人が並ぶ。
「えっと、それぞれ違う性質の子よね? この子が風で?」
「うん、ぼくかぜー」
「俺様は火だ」
「私は水です」
「……地」
うわ! 初めて声聞いた! 喋れたんだね、この子。
「ひめさまー、なまえー」
うーん、リィンの決めた名前は使えないんだもんね。
私が、この子達にぴったりの名前を付けなければいけないんだ。
*****
辺りはすっかり日が落ちて暗くなり、待ちくたびれた精霊たちは寝転がったり歩き回ったり、好きに過ごしていた。
「ひめさまー、まだー?」
「時間掛かりすぎでは?」
「ちょ、ちょっと待って~~」
「姫さんよぉ、こういうのはパパっと決めてくれよな! パパッと!」
「ううう」
私は、「名前を付ける」という所で行き詰っていた。契約する決意は出来たんだけど、この子達に似合う名前ってどんなんだろう……。
ジェネに助けを求めても、「これは契約者が考えなければならない事だからな」とやんわり断られ、うんうん唸って名前を考えた。
――うーん、名付けって難しいなぁ。こっちの名前風に考えるから浮かばないのかも?
そうだ、日本名でならどうだろ。
我ながらいい思いつきに感じた。
地、水、火、風。
自然の中でそれらが動く様を想像して――ひらめいた!
「よし! 決めた!! 皆せいれーーーつ!」
期待に満ちた目をして、四人がびしっと横一列に並ぶ。
「では……まず火の子! あなたは焔!」
「――ほむら」
「水の子! あなたは飛沫!」
「――しぶき」
「風の子! あなたは疾風!」
「――はやて」
「地の子! あなたは息吹!」
「――いぶき」
四人の精霊は私の付けた名前を復唱して目を閉じ、ボウッと光の繭に包まれた。