1 精霊姫
「子供……このような山中に子供だけが現れたのか?」
訝しむジェネに、私は最初から変だと思った不思議な出来事について話した。
地熱があること、雨が止んだ事、荒涼とした土地なのに、呟いた途端ハーブがいきなり生えていた事。そして四人の子供が揉めていて……。
雨が止んだのはともかく、四人の子供が現れると言う事がまずおかしい。
五歳程に見える背格好の子供を、荒れた天気の日に外へ出す親はいないだろうに。
「もし……本当に居たのなら、まだその辺りに居る可能性もあるな」
「そうですね。じゃ、私見てきます! ……旅の石一個借りますよ?」
気絶なんてもう御免なので先に保険を持つ事にした。
「あ、そうそう。体調はいかがですか?」
体ごと向き直り、そっと手をジェネの首筋に当てた。翔が熱出したときに体温を調べる為によく触ったものだ。額よりも分かりやすく、ついジェネにもそうしてしまった。
「――ひと寝入りしたお陰で、大分良くなったみたいだ」
ジェネは若干目を逸らしながら言い、私も触れた感じで大分落ち着いてきてる事を確認できた。
「じゃあ、これ飲んでてください。風邪によく効くんですよ」
ポットに入ったハーブティーを差し出し、私はさっき子供達を見た場所まで行く事にした。
*****
こんもりと突然生えたハーブの茂みの影で、その子供達はまだいた。
「――で? 反省したのかよ」
「ひっく……あい。はんせいしてます」
「本当に反省してるのですかね。現に姫君は倒れられて、私達と会話どころでは無くなってしまいましたし」
「大体、なんでおめーはあんな虫持ってったんだよ!」
「ぐすっ……おいしいから、げんきになるとおもったんだもん」
「かーーーっっ!! んなわけねーだろ!」
「そうですね、寧ろ美味しいと言うご婦人を探す方が希少ですよ」
「ひーん」
……反省会してるよ。
泣いている黄色の子を囲むように、赤の子はイラつきを抑えられないのか、頭をバリバリ掻いていた。青の子は石に腰を掛け、足を器用に組んでいる。緑の子は腕を組んで仁王立ちだ。
どうやら話は纏まったみたい。
「姫様には虫厳禁」――と。
――話の流れ的に、姫様って私の事……なのかな?
イモムシを私に渡そうとした事で、黄色の子が怒られてるって事は。
「よしよし。話が決まった所で、水の、お前行けよ」
「え、私ですか? じゃあ私が皆さんを代表して……」
「ぼくぅ! ぼくがいくんだい!」
「……」
「皆さんみたいに雑な態度はいけませんよ。私が行きます」
「ぼくがー!」
「……!」
「てめーらいい加減にしろ! 俺が行く!!」
「「どうぞどうぞ」」
「!!」
――――二度目!
声は二人だったけど、どうぞの手は見事に三本揃った。
余りにも可笑しくて、気付けばお腹を抱えて笑ってしまう。
「あはっ! あははははっ! なにそれー!! お笑い芸人がい
るー!!」
腹筋痛いよー! ほっぺたの奥が痛いよー!
目に涙を滲ませた頃、ようやく落ち着いた。
指で涙を拭いながら子供達を見ると、みんなあんぐりと口を上げてこちらを見ていた。
「ひ……」
「ひ……」
「……」
「ひめさまーーーーー!!」
どかーーーーんと飛び込んできた黄色の子。
余りにすごい衝撃で後ろに倒れそうになるのを、グッと堪えて黄色い子供を支えた。
「ひめさまひめさまひめさまーーー」
「あっ! コラ俺様が……!」
「……仕方ありませんね」
ぎゅうぎゅうしがみ付く黄色の子を抱っこして、目線を合わせるためにしゃがんだ。
「あの……あなた達一体?」
「説明は私がさせていただきます」
一歩前に、青の子が進み出る。
「ようこそ精霊の国レーンへ。私達は『精霊姫』の後継者であられる姫君をお待ち申し上げておりました」
五歳児程の身長で、優雅に腰を折った。




