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 よくも言ってくれたな! あの竜め!!

 声に出して怒りたい所だけど、心声の為に誰にも聞かれなかったので、心の中で吐き捨てた。



*****


 

 私達は今野営地にいる。

 野営地、っていっても単に地面むき出しでごつごつで、草もボーボーで虫も飛んでて……。

 そりゃそうだ、野宿だからね。のーじゅーくー(しつこい)


 ハルドラーダ師匠は火を起こし、バッツは薪を拾いに、ジェネは『旅の石』と呼ばれる、旅人に必須な呪物を、焚き火を中心として四角になるよう置いている。

 この石は、虫除け、獣除け、魔除けをしてくれるありがたーーい呪物なのだ。値段が高くなれば高くなるほど効果が大きく現れる。


 ――私はこれがあると聞いたから、野宿でも良いとなったのだ。


 私がこの世で一番苦手なものは――虫。


 うわー、自分で言っといて寒いぼ出た! 想像すらしたくないね! あんなのと遭遇したら多分私気絶するだろうな。いやいや気絶なんてしちゃダメだ、意識無い時に寄ってこられたらどうするよ!

 自宅にゴ○(自主規制)出たときは、翔か友達が来るまで外で待機。その後、徹底的に掃除した。常に部屋を綺麗にしているのは、単にアレが怖いからに他ならない。一匹いると三十匹はいるっていうしさ。


 初夏で割と天気も安定してて夜になっても寒くないというのは、野宿にとって一番ありがたい事だけど、それは虫たちにとっても言えることであって……。

 あの石、日本に戻る時に翔に買わせて持ち帰ろう!


 さてと。

 私は、最後の旅の石を置いているジェネの傍に寄った。

 

 「あのージェネ、ちょっとお話が」


 「なんだ?」


 バッツとハルドラーダに聞こえない距離を確認して、それでも小声で。


 「ちょっとお聞きしたいんですけど、普通ですね、竜との契約って一対一で行われますよね?」


 「なんの話だ?」


 「ですから、竜の真名を知る人間って契約した主しか知らないものですよね?」


 「――通常そう聞いている。詳しくは知らんが真名というものは、『試し』に認められた人間一人だけに与えられる特別なものだ」


 「ですよね……」


 それがどうしたんだ? という問いかけの視線を外し、「それと」と続ける。


 「私を沢山使ってくださいね。ジェネの従者になると決めたんだし、徹底的に通してください。あ、バッツが戻ってきちゃった。ではよろしくお願いします」


 一方的に言い切って、私はサッサとちょっと離れた茂みへと向かう。

 バッツと途中すれ違い、「どこ行くんだ?」と聞かれ「トイレ!」と元気良く言い切った。

 


*****


 

 スッキリした所で、火の傍へ戻ると


 「ウンノ……女になりたいんだったらもうちょっと慎み深くしろよ。トイレって大声で言うな! 大体動きがあまり女っぽくない」


 バッツからダメ出しされる。

 うっ。そうだそんな余計な設定を自ら足しちゃったんだっけ!


 「俺はさー、女になりたい気持ちは分からないけど、国を出てまで悩んでるんだろ? 頑張れよ、まずは見た目から」


 うわー、同情されてる。泣きたい! 主に『見た目』の所で!

 

 「バッツ先輩……どうやったら女性っぽくなれますかね」


 特に色気! 色気!


 「おっ、その先輩っていいな! お前見所あるぞ。よーし、俺お前に協力するぜ!」




 そして、『バッツから見た女性像談義』が延々語られた。

 えーん! もう眠いよー寝かせてー!!

 ちょっとした言い訳がこんな珍妙な展開になるとは思ってもみなかった……。

 






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