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 私達は、翔の用意してくれた『竜船りゅうせん』に乗る為、バッツの案内で竜船が繋いであるという場所へ向かった。竜船て何だろうと思っていたら、ジェネが「背中に乗って飛行できる竜のことだ」と教えてくれた。

 へー、そうなのか。私が知っている知識は、二代前の時代しか分からない為「今時の若いもんは」なんてつい口に出してしまいそうになる。

 自分の感覚で十分くらいだろうか。思ったより遠いしなんだか山も見えてきて、これ登るのかなあなんてうんざり思っていたら

「風竜よ、ジェネシズだ」

 とジェネがその山に向かって声を掛けた。すると、その山の麓からスッと大きな首を持ち上げたのは……竜だった。

「ええっ! 山だと思ってたのに」

 かろうじて悲鳴は押さえ込んだが動揺は隠し切れず、思わず上げた声は震えていた。

 ――――竜。

 ラスメリナの国の主役的存在で、この国は竜なくしては語れない。人々から神の使者として崇められるも、一たび逆鱗に触れると三日三晩は荒れ狂い一面焦土と化す苛烈な面もあり、畏怖されてる。知能も恐ろしく高く、使役しようにも『試し』に認められないとその場で惨殺という例もあるほどだ。

 もちろん、年若い竜ならば、ほんの数年のみの契約に気まぐれで人間に使役されることもあるにはあるらしいし、亜種ともなればそれほど知能も高くなく、普通に捕縛できたりもする。そのような竜はラスメリナ軍に配置し、兵は竜騎兵として戦に使うのだ。

 しかし――このサイズの竜って……古竜よね。気難しいじーさん竜だよ、絶対!

(娘。ぬしは我の声が聞こえるか)

「ひゃっ」

 思わずビックリしてキョロキョロ辺りを見回した。

(娘。我が話しておる。お主の心声が煩さくて敵わん。少し黙れ)

 ジェネでもなくバッツでもなくハルドラーダの声でもなく。というか、耳から聞こえてないような……? ふと目の前の竜を見やると、バッチリ目が合ってしまった。

(――――え? まさか?)

(遅い。そもそも心声で自ら語っているお主が気付かない訳なかろう)

(……いえ? 私そんなつもり無くて、ただ考えてただけなんですけど)

 機嫌が悪そうな風竜に怯みながらも、身に覚えが無いことに心の中で反論した。

(ククッ……どうやらお主、まだ目覚めぬ者らしいな。これは重畳ちょうじょう

 不機嫌から一点、愉快そうに笑いを噛み殺した風竜は、ギョロリとした爬虫類な金色の目を細めた(器用だな)

「ウンノ? どうした」

 竜をじっと見ていた私を気遣って、ジェネが声を掛けた。私は慌てて「なんでもありませんっ」と傍に駆け寄る。

「この風竜は、カケルが契約した竜だ。本来ならこの様な雑事をさせる訳にもいかんのだが、特別に許された」

 コッソリ私に「ウンノの為だ」と耳元で囁いた。私は耳に伝わるジェネの吐息にざわりと体内温度が上がった。不意打ちだよ!

 きゅっと一瞬縮こまった心臓を撫でつつ、契約した竜、という言葉を聞き返した。

「この大きさということは……古竜ですよね? ラスメリナ王と契約ってどんな『試し』があったんでしょうか」

「カケルから聞いた話では二日戦った上に勝った、と聞いた」

「は? 勝った?!」

 ありえない。古竜だよ? こんな山みたい大きくて、神の使者って言われる畏敬の存在だよ? なにその勝負って! 無茶苦茶すぎだよ翔!!

(娘、煩い)

(うわっ! すみませんまたダダ漏れでしたか……)

(まあよい。そうか、お主はあやつが言っていた姉か)

(えと、はい。翔の姉です。訳あって男のフリしてますが)

(そこの人間の言っていた通り、我はあやつと契約を結び使役されておる。あやつは「ねーちゃんを大事に扱え」と我に言霊で縛りおった)

(御免なさいすみません申し訳ありません!)

 あまりの翔の暴挙に、つい謝罪も三段階で丁寧になる。

 古竜に、翔の口調だろうが「ねーちゃん」と言われて、痒くも無い脇腹がムズムズした。






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