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 サーラと料理を並べていたら、翔とジェネがやってきた。

「うっわー、うまそ!! ねーちゃんの作った中華久々だ~」

「うん、ここの食材で作るなら中華かなと。こらっ! ツマミ食いしないの」

 翔の伸ばした手をピシッと叩き、椅子に座るように促した。すると翔はすすすっと近寄ってきて、いつものヘラっとした笑顔を向けてきた。

「ねーちゃん、さっきは卵サンドありがと! ジェネがね、声にならないほど美味しいって感動してた。できる事なら毎日食べたいってさ!」

「あら、カケル様。なんだか意味深ですわね? うふふ」

「サーラ!」

 無表情で焦りは見えないけれど、ジェネは叱るようにサーラへ制した。そのサーラは、「アハハ、それじゃユーグたんを迎えに行ってきま~す」というなり、ひらりと扉の外へ出て行ってしまった。少し気まずそうにしながら、ジェネは小さく咳払いをする。

「……ウンノから貰ったあの卵サンド、といったか。あれは人生で一番美味いと思った。また作ってくれ」

 こんな端整な顔立ちの人に、真摯な目で、じっと見つめながら褒められてしまった! 私は照れくさいのをごまかす為に、つい翔を一発殴ってしまう。

「ぎゃ! いてえよねーちゃん暴力反対!」

 私の目を盗んでつまみ食いに精を出していた翔の抗議は、あえて聞かなかったことにする。

「あの味はどうやって出してるんだ? 不思議な酸味を感じたが」

「マヨネーズの事ですか?」

「それ、サーラも聞きたいですわ!」

 ユーグにお姫様抱っこされながら(なんで?)帰ってきたサーラが、勢いよく手を上げながら話に加わる。

「あのまったりとしてるのに少し酸味があって、それでいてクドく感じさせない味わいの秘密を知りたいです!」

 どこの料理評論家だよ!

「サーラたんに作り方教えてあげてください。今度愛情たっぷりに作ってもらおうと思います」

 ユーグさんには、お昼に出かけると聞いていたので渡せなかったのだ。翔やジェネから自慢されたことが、よっぽど悔しかったらしい。

「わかりました。では食事をしながらお話しましょ。冷めてしまいますからどうぞ席についてください」




 席順は、翔がお誕生席で(王様だし)、ユーグとサーラが並んで座り、私はジェネと並んで座った。

 さて、料理と食べ方の説明をしましょう。

「まず、こちらがおおよその材料で作った拉麺(ラーメン)棒棒鶏(バンバンジー)風のサラダ、味的には合ってる餃子、エビらしきもののマヨネーズ炒め、キャベツに似て非なる葉物のピリ辛炒め、最後に中華ポテトの偽物です」

「ねーちゃん、大体で言うなよ……」

 少し呆れた口調で翔は言うが、しょうがない。だって『っぽい』味で探したものだから。

「麺が伸びてしまうから、どうぞお早めにお召し上がりください、箸も作ってありますが、フォークでもなんでも使い易いものでどうぞ」

 私と翔は「頂きます」と手を合わせ、ユーグとサーラは軽く目を閉じ、ジェネは左手を自分の胸に当て(これ騎士の礼の時にもやってたな)なにか呟いていた。国によっていただきますの形式が違うんだね。

 私と翔以外は、流石に箸は難しいようで、ナイフとフォークを上品に使いこなしていた。逆に私はそっちのほうが難しいです。

「それで、マヨネーズの作り方なんですけど、卵の黄身を一つ分として量を決めるなら、そうですね……このスプーン一杯の酢を入れてよくかき混ぜます。完全に混ざったら、うーんと、このグラスくらいかなー? 油をほんの少しずつ、ゆっくりとかき混ぜるの。ここのゆっくり、がポイント。そして最後に隠し味として、ほんの一つまみ砂糖を入れて完成」

 私はエビマヨ炒めを食べながら、レシピをサーラに伝えた。サーラは一生懸命にメモを取る。うんうん、ユーグの為にがんばるんだぞ。

 話している間に、翔とジェネは拉麺のお代わり。麺もスープも多めに作ってあるし、麺の湯で時間は二分程なのですぐに出来上がった。

 いつの間にかジェネは、翔に教わりながら箸の使い方を覚えていた。大きな手で箸を持つとなんだか微笑ましいが、異世界で衣装も違って武人の美青年が箸を使うってのはかなりヘンテコだ。でもいいのだ。イケメンは何でも許されるからね。


 並べた皿の全てが綺麗に片付いたところで、食後のお茶は翔に淹れさせた。一国の王だろうがなんだろうが、私は姉の特権を行使する。だって、翔の淹れるお茶は美味しいし、私は美味しく飲みたいし。

 この紅茶らしきものには、市場からの帰りの野原で見つけたハーブのステビアを入れてある。この葉は甘味が強く、砂糖要らずで低カロリー。ダイエット中には最適の天然甘味料なのだ。

「おねーさま! このお茶、甘くて美味しいです!!」

 サーラがベタ褒めするほど、気に入ったようだ。乾燥させておいて、いつでも使えると教えると「明日沢山採ってきます!」と張り切った。

 そのサーラを見て、ユーグさんは目を細めながら「可愛い子だ」と、サーラの口の端についていた汚れをペロリと舐め取った。

 そういうのは、自室に戻ってからやってください、幾らでも!!




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