3 宴会家族
今のところは……大丈夫そうね。
料理もお酒もみるみる無くなる様は、ある意味爽快ともいえる。気持ちいいほど皿が空になり、水のように杯が干されていく。
この国を傾かせていた膿を出し、これからの再出発としての宴会は、どこまでも雰囲気が明るかった。
私に「ウンノ! ああもうそんな気軽に呼べないな。え? いいのか?」「俺の嫁に!」「食堂にずっと勤めてくれないか?!」など様々な声をかけてくれる。
「私」を認められたのかな、と思うと何故だか心の奥底からじんわりと温かい気持ちが湧いてきて、うれしいだなんて一言で終わらせたくない喜びで満たされる。
「ウンノちゃん、ちょっと王様呼んでるわよ、こっちきて」
イル・メル・ジーンにツンと袖を引っ張られて、食堂中央あたりのテーブルへと連れてかれた。私の知らない騎士何名かと同席していたマルちゃんは、私を見るなり顔をパッと輝かせて立ち上がった。
「ウンノ!」
「マルちゃん! さっきとっても格好良かったわ!」
私はマルちゃんに駆け寄ってぎゅうっと手を握った。あの演説は心からの言葉だと感じ取れたし、ちゃんと私の気持ちが伝わったことが何より嬉しかった。
するとマルちゃんは顔を赤くして俯いた。
「あっ、ごめん……なさい。そうですよね、一国の王様に不敬にあたりますよね。すみませんでした」
握っていた手を解こうとすれば、逆にぎゅっと固く掴まれてしまった。
「いや違うんだ、違うんだよウンノ。その……お前だけには王である前に『マル』であると思っていて欲しいんだ。だから敬語も要らぬ。頼む」
「は、はい。――――じゃないわ、ええっと、わかったわマルちゃん」
じっと真摯な目で見つめられて、しかも顔のとても整った十六歳の熱の篭った懇願に私はコクンと頷いた。王としての責務もあるだろうけれど、ひと時だけの重い鎧を外せる場所も必要だろう。
そうだ、七歳年下の弟だと思えばいいかも。むしろ翔よりもマルちゃんの方がちゃんと弟らしいかもしれない。
そう思うと急に可愛く思えて、自分とそう身長の変わらないマルちゃんをぎゅっと抱き締めた。
「王様の仕事、大変だけれどみんなで支えるからね! もちろん私も!」
「はいはい、わかったから離れなさいよウンノちゃん。――――ったく、罪な娘ね。このお坊ちゃんに刺激強すぎよ」
そう言ってベリッと私の手を剥がしたのはイル・メル・ジーンだった。
後半ボソッと付け足された言葉はよく聞き取れなかったけど……うわわっ、ここには近衛騎士団の面々や厨房で働く人たちもいるんだった!
慌てて離れると、マルちゃんは……肌という肌を全て赤くして天を仰いでいた。
やだっ、みんなの前で子ども扱いされて恥ずかしかったのね!
同じテーブルにいた人たちも、ポカンと私たちの様子を見ていたので相当呆れているに違いない。
「あのっ、すみませんでしたお騒がせして!」
「いや、いいんだ。君が団長とリィンの娘さんなんだね? 会えて嬉しいよ。私は一番隊隊長セイベン・スィーオ。ここにいる者達はすべて団長を慕って近衛に入団したんだ。先の大戦における団長の武勇は凄まじいものがあったんだぞ」
まるで自分の事の様に誇らしげに語るのを、私はなんだかくすぐったく思う。
「ええ、私もその戦争の事は知っています。ただ……父親だと分かったのは今日初めてなので、実感が湧かないというか、なんというか」
本当にこの世界に来てから、ありとあらゆる事柄が一度に起こりすぎて、自分の処理速度がなかなかついていけない。父親という存在をまるっと受け入れるにはまだ早すぎて……憧れていたあの騎士が父親だという事を、徐々に家族として噛み締めて行こうと思う。これから時間は沢山あるのだから。
「そうだったな。しかしこれで団長の元に家族が揃ったんだ。団長のあの寂しそうな背中を見なくてすむのは俺たちにとっても嬉しいぞ」
そういって、セイベンはテーブルに着く他の騎士達と杯を交し合った。
二十三年の月日は、お父さんにとっても私たちにとっても非常に長かった。やっと、家族としての歴史が始まるんだと思うと、とても胸が熱くなる。
「ウンノ! ちょっと来てくれないか!」
その時厨房の方から私に声が掛かった。何だろう、なにかあったのかな?!
「じゃ、マルちゃん、みなさん! 沢山食べてね!」
そういい残し、私は声の主アウランさんの下へと駆け寄った。少し困ったような顔をしていたので何かあったのかな?
「ウンノ、折角の所すまないが料理が足りなくなりそうだ。その……竜帝様が……」
まさか食べ過ぎてるんじゃないだろうな、翔!!
しかしそのまさからしくどんどんテーブルに乗る料理を平らげて、只今三つ目のテーブルを攻略した所だと。
その上、近衛騎士だけの食堂なのに噂を聞きつけた文官やらなにやら、コッソリと加わってきているようで人数がとても増えている!
うっそー、ムリムリ足りないわ絶対!
「ウンノ、何か簡単なのでもないだろうか? こう言っては何だが、酒さえあればあの騎士団の連中は大丈夫だ。普段酒が入るときは、塩茹での豆だけだからな」
豆だけって! 酒さえ飲めればいいのかな?! しかし今はお母さんもいるし、豆だけ出すなんてそんな恐ろしいことは出来ないよ!
食材の在庫は把握している。ジャガイモだけは恐ろしく量があるのでとにかくジャガイモろう! そして私はアイツを止めよう!
アウランさんに「ジャガイモ沢山茹でておいて!」と頼み、ある場所へと走った。
☆妄想部☆
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こちらに翔が相当アレしてます。
是非番号順にお楽しみ下さい!
最後のにも私の「とある会社」シリーズの面々が
それは楽しそうにワイワイとしていますw
多くの方にお気に入りユーザーしていただいて
ありがとうございます♪ またひょっとしたら何か
あるかもしれません……と、ここで部のほうに振っておくw