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side 翔

長らくお待たせいたしました。





 「クランベルグ殿、これは一体どの様な茶番劇かな?」 


 「ここは国政を司る朝議の場ですぞ! 何故そなた達の様な下級の者達がこの場におるのだ。即刻立ち去らねば逆賊としてその首が飛ぶ事になるぞ!」


 口火を切ったのは宰相? そして腰巾着の大将軍。あー、二人ともヤな声してるね。まっ、他にもざわざわとそれに追随する声も上がってるけど。この辺は小物だな。


 僕が今いる場所は朝議が執り行われている部屋の窓の外。とーちゃんに「外で待ってろ」って言われちゃったからねっ。


 うーん、多分威圧になるかなーと思って、やっと揃えた四大古竜全て連れて来ちゃったからだと思うんだ。まっ、半分見せびらかしなんだけど。

 デッカ過ぎて隠れるなんて無理だから、一般的に飼われてるサイズの竜、つまり馬位の大きさへと変化してもらってそれに乗って窓際に隠れている僕。

 傍から見ると怪しい事この上ないねっ! 


 朝議の席に連ねるイル・メル・ジーンに携帯電話を持たせ、『力』と『魔力』により集音力を上げてよく聞こえるから話は大体聞こえる。

 イルは発言権があるくせに政治そのものに関して興味がないため、この場は黙ってみているようだ。

 中の声だけは拾えるから、とりあえず僕も成り行きを見守る。


 数年前に僕がこの国の城壁を消し、ついでにお仕置きした宰相と大将軍。その時の事を『この僕が』珍しく覚えているから、この声はあの二人で間違いない。

 なんだ、まだこんなくっだらない事してんだな! 


 「いやいや宰相殿、こいつらを呼んだのは私です。申し訳ないが、今暫く私の話を聞いて頂きたい」


 とーちゃんがそれでもと丁寧に宰相へと許可を求めた。中に引き入れたのは、一番隊副長、四番隊隊長、七番隊副長。他数名部下の者達が入っている。近衛隊にも宰相などの息が掛かったものがいる為、一枚岩とはいかないけれど、とーちゃん自身の求心力により固い絆で結ばれているらしい。


 「クランベルグ殿、貴殿は確かに先の大戦ではレーンの為に大いに活躍し、貢献なされ英雄とまで呼ばれておられますが…… いささか勘違いが過ぎるのではありませんか?」


 「その通りです宰相殿! 本来なら貴殿のような大した爵位も持たない一騎士が、この場にいる事など許されるものではないのですぞ。それをいつまでも過去の栄光を振りかざし、この平和な時代に大きな顔で王宮内を練り歩くなど…… 恥というものをお知りになった方がよろしいのでは?」

 

 む。この声は大将軍だな? 半年間『バブバブ』しか喋られない上にアフロにしてやったのを忘れたか。


 「ははっ、平和…… ですか。大将軍殿、恥を知るのは私ではないぞ? この国で貴殿らは王に次ぐ地位にあるにもかかわらず、少しもこの国の事を考えぬばかりか、その地位を利用して己の利潤ばかりを追い求め、この国にどれだけの損害を与えたのか…… 少しは反省した方がよろしいかと思いましてね?」


 「利潤? 損害? 反省?…… クランベルグ殿、申し訳ないが、貴殿の言う事は私にはさっぱり理解ができませんなあ。どうかその筋肉でできたガチガチの頭を、もう少し柔らかくしてから物を申して頂きたいものですな」


 む。この声は宰相だな? アレを半年間役立たずにした上に…… あ、元々役立たずではあったけどね。その上落ち武者ヘアーにしてやったのを忘れたか!

 それにしてもよく喋る豚だ。紅の空飛ぶ豚を見習うがいい。


 「ハハハ、筋肉の頭ですか! それはそれで悪くない。ふむ、確かに宰相殿のおっしゃる通り、私ではあなた方が理解出来るように上手く説明する事は出来ませんなぁ。ですから代わりに…… ロゥ、お前が宰相殿達にわかりやすく説明してやってくれ」


 「―――― 畏まりました」


 ろー?

 誰だっけ。


 いや流石にね、僕も短い名前なら覚えられるし、ジェネの副官というのも知ってるさ。ろーね、ろー。


 「まず初めにですが……」


 「おやおや、どこかで見た顔だと思えばお前は…… 確かあの老いぼれの―――― 失礼、前宰相殿のご子息ではないか? どんなに才気あふれる有能な人物でも判断力に欠けているとは…… ククッ、親子共々、従うべき相手を間違えその才能を無駄にするとは。実に惜しいですなぁ」


 うっわ、やだねーこの嫌味。もっかい『バブバブ』の刑か? いや、今度は『ぴろ~ん』だな!

 僕はろーがどう切り返すのかと興味シンシンで耳を澄ます。


 「さて、私が調査しました所――――」


 おおっ! 華麗にスルーだ! あの大将軍の嫌味をまるっと無視か! やるなあ、ろー!


 「…… そして国へ上げる税の帳簿、そうですね…… 宰相になられてから少しずつ、しかしこのところ大胆になってきていましたね。上手に隠したつもりですが、数字に表れています。鉄鉱石が主に算出される領地にて、売り上げの一部が国税として送られるはずが、それとは全く関係のない商品に少しずつ上乗せという不正をし、税金を売り上げ金額から少なくするという…… なんとも分かりやすいごまかしが認められました。

 これは各地域全ての流通と価値を調査済みであり、裏付けも取れています」


 ―――― 完璧だな。

 僕は内心舌を巻く。あの膨大な資料の中からよく見つけたよ! しかも過去の資料何年分もひっくり返して、些細な変化に気付くとはやるなあ!

 僕だったら、ユーグに丸投げだな。ってか、今もラスメリナをユーグに丸投げしてきた所だ。

 僕はいずれ王を辞める。その為にユーグを育てているといっていい…… いいんだ!


 「クックック…… そうですか、そうですか。しかし一介の騎士という身分のお前に、私が相手にするものか! 下らぬ茶番は仕舞いだ! 皆、解散!」


 「ちょっと待て!」

 

 ざわり、と場が乱れた。誰だ? この声は……


 「私がその罪を認めよう」


 「なっ…… ディエ…… ディエマルティウス、お、う」


 誰が入ってきたのか気になり、コッソリ窓枠の端から覗くと、そこに現れたのはこの国の王、ディエ…… うん、王だ。


 「おじ…… いや、宰相よ。そなたが犯した罪は大きい。私の名に置いてそなたを罰する」


 王はハルに支えられながら、とーちゃんの横に立った。おっきくなったなぁ! 僕が某特撮ヒーローの仮面被って会ったのは、もう六年程前になると思う。あの当時十歳だった王が、こんな立派になって……。僕はなんか孫でも見るような感じで見つめちゃった。

 

 「大きく出たものですね…… いや? おい大将軍。こやつは王に成り代わった偽者に違いない。連行せよ!」


 「―――― っ! あのヤロー!」


 言うに事欠いて、自分の孫を偽者扱いか!

 僕は乗っていた火竜から立ち上がり窓を蹴破って進入しようとした所「待て! カケル!」と制止の声が聞こえた。


 「う、わっ! ジェネ?! お、おいおいおいっ!!」


 城の上の辺りから、ジェネが僕目掛けて飛び降りてきた。


 「うひゃああ! あぶなっ!」


 どすーんと竜の上に落ちてきたジェネ。


 (カケル、何者だこやつは。我を踏みつけるなどと……)


 (あー! ダメダメ! 僕の親友だから手を出さないで!)


 火竜が踏まれて苛立ちの声を上げる。

 やややっ、相当機嫌悪いねっ! この火竜は好戦的で、今炎をひと吹きでもされたらこの城は無くなってしまうよっ。


 (こらギース! ギースラルゼータ!)


 (……)


 真名を心声に乗せれば不承不承ではあるけれど怒りを納めた。うん、流石に僕が頑張って捕まえた竜達のながーーーい名前は覚えてるさ。

 僕はギースの怒りの原因を注意する。


 「ちょっと! ジェネってば、あぶねーじゃん!」


 「それはお前が今まさに飛び込もうとしていたからだ!」


 「えー、だってー」


 「だってじゃないだろう!」

 

 すうっと息を吸い込む。あー、これは来るな。


 「大体だ、カケルはい・つ・も・後先考えずに力を使うのが悪い! 城壁消したり宰相などに呪いをかけたりと挙げればキリがない。それを未然に防がねばこの国は滅ぶ! 間違いなく!」


 「滅ぶって! そこまでしないよぉ…… 多分」


 「その多分が問題なんだ! 今まで多分で治まったことなど一度もないだろうが!」


 小さく反論したものの、あっという間に言い返されもうゴメンナサイだ。

 しゅーんと項垂れる僕に、ジェネは「分かったら突入などするな」と釘を刺した。その声に被さるように、僕達に声が落とされた。


 「…… 話は終わったかな?」

 

 ぎょっと、声がする方を見た僕とジェネ。そこにはとーちゃん…… いや、団長がすぐ傍の窓を開け、呆れた顔をして見下ろしていた。


 そうだ忘れてた、ここは窓のすぐ傍。…… 大声あげちゃってたね? あははっ。

 ジェネをチラッと横目で見れば「しまった」と珍しく口を歪めた。無表情が売り(・・)のジェネが。

 

 「あ、ごめんね? だんちょー」


 困ったやつだと言わんばかりの目線に、僕はにへらっと笑って立ち上がった。









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