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サーラさん、ジェネシズさんが傍にいる時は、にこやかに挨拶してくれたのに、いったいどうしてなんだろう。
初対面でこれほどまでに敵意を向けられる経験が無い私は、戸惑うばかりで困り果てた。
やけに早い歩みに追いつくのがやっとで、息切らせながらようやく近づけたと思ったら、サーラさんが角を曲がった。見失っては大変だと走って距離を詰めたら、曲がり角で何かとぶつかり、尻餅をついてしまった。
「いたたたた……あぁっ! すみませんごめんなさい大丈夫ですかっ!」
お尻が痛くて立ち上がれないけど、飛び出し不注意なのは私なので慌てて謝罪の言葉を口にする。
すると、相手は尻餅どころか普通に立っていた。ちょ、頑丈だな!
「いえ、私は問題ありません。貴女こそお怪我はありませんか?」
すっと手を出し、私が立ち上がるのを助けてくれた。茶髪に緑の瞳で、少し目じりの下がった癒し系の顔立ちで、親しみやすさを感じる。
「ありがとうございます」
「ああ、もしかしてカケルの姉君ではありませんか?」
「は……」
『はい』の い、まで言えなかったのは、視線の先でサーラが爆走して戻ってきたのを見つけたからだ。
そして、サーラはガッと彼の腕を掴み、ギュッと抱きしめるように自分の腕で取り込む。
「ユーグゥ~、ここに居たんですの~? 私探してましたのにぃ~」
なんて甘ったるい声! さっきのあのキツさはどこにいったの!?
ユーグさんの腕に頬をスリスリしてるサーラさんは、先ほどまでの険悪な雰囲気を一切感じさせなかった。ユーグさんは、「ははは、こいつぅ」なんて言っちゃって! いきなりイチャイチャしてるし、私とてもじゃないけれど、いたたまれません。
というか、ユーグさんの死角から時折ギラっとした視線をサーラさんから感じるんですが! なんでよ!
「サーラ、また後でアレをしよう、いい子だから。さて、姉君様は部屋に戻る途中ですね。私もジェネに用事があるので、お部屋までご一緒させてください」
アレってなんだ、あれって!!
非常に気になる単語もあり突っ込みたい所だったけど、この雰囲気は耐え難かったし、なによりサーラの殺気が怖くて早く部屋に戻りたかったので、何も言わずに頷いた。
城の回廊というのか。
等間隔に蝋燭が灯り、温かみは感じるけど、現実味は全く感じられなかった。微妙な凹凸を足の裏へ伝わるタイルも、木で出来た扉も。私だけなんだかCG合成されちゃった、みたいな。
何らかの配慮があったのか、人気は全くなかったけど、前を行くイチャイチャカップルはこれらの景色に馴染んでいた。
いや、とび蹴りしちゃいたい気持ちはあるけどね。
よそ様のラブラブな姿見ると、なんとなくイラっとしませんか。僻みかもしれないけど。