地獄の蜘蛛の糸を『極太ロープ』に改造する横で、僕のろくでもない日記を読み上げる
4月13日
極楽は今日も平和だ。蓮の香が鼻をつく。
ふと見ると、隣で釈迦くんが銀色の細い糸を地獄に垂らしていた。
「ガンダタという男がいてね。悪党だけど、昔、一度だけ蜘蛛を助けたことがあるんだ。だからチャンスをあげようと思って」
なんて、のんきなことを言っている。僕は思わず口を挟んだ。
「釈迦くん、その糸じゃ頼りないよ。地獄には何万にもいるんだ。みんながしがみついたら一瞬でプツンだ。もっと太い縄にしなよ」
僕のアドバイスに釈迦くんはハッとした顔をした。
「確かに・・・物理的な強度が足りないね。よし、編もう。最高の縄を!」
そして始まった極楽特製・ハイパーレスキュー縄の製作。釈迦くんが慣れない手つきで蓮の繊維を編んでる横で、僕は暇つぶしに自分の日記を読み上げることにした。
4月15日
今日はアンパンマンに出会った。こいつは正義のヒーローのくせに友達がいないらしい。愛と勇気だけが友達らしい。しかも顔が濡れるとふやけて力が出ないというなどとふざけてことを言うやつだ。ところで、気になることが今、ある。こいつの中身はこしあんだろうか。つぶあんだろうか。はたまた、しろあんか。それともうぐいすあん?
*先生からの一言
先生はつぶあんよりこしあんが好きです。
4月16日
突然だが、僕はちくわが嫌いだ。なぜなら穴が空いてるからだ。どうして穴が空いているのだろう?
*先生からの一言
好き嫌いはよくないね。穴がきらいなら穴を残してたべようね。
4月19日
夜、銭湯に行く途中、夜空を見上げてみた。この宇宙の空間では自分はちっぽけな人間に思えてきた。銭湯に行ってみんなのまたの間を見た。
「みんな、なんて、大きんだ」
「なんて自分は小さな存在なんだ」
*先生からの一言
かつひろくんの成長はこれからだよ
4月20日
掃除をしていたら、古い少女マンガが出てきた。裏表紙にひみつのアッコちゃんのコンパクトの商品の広告が載っていた。広告には「偽物にお気をつけください」とあった。そうか。偽物が出回ってるのか。きっと本物は変身できるのだろう。
*先生からの一言
先生が読んでいたりぼんに載っていたアッコちゃんの鏡はコンパクトじゃなかったんだよ。
4月22日
海辺を歩いていると悪ガキたちが亀をいじめていたので、助けてやった。お礼に龍宮城に連れていってくれるというので、背中に乗って行こうとしたら俺が乗れるくらいに巨大化しやがった。エラ呼吸ができない僕は龍宮城に行くのをやめて、この亀を売っぱらってやった。いい小遣い稼ぎになったぜ。悪ガキから買った亀がこんなに高値で売れるとは、これぞ転売ヤーの極意だぜ。
*先生からの一言
頑張って、エラ呼吸をマスターしましよう。
4月23日
川にいったら洗濯しているどっかのばあちゃんがいたので、僕は「そんなことをしたら川が汚れるじゃないか」と注意した。僕達が言い争いをしていると大きな桃が流れてきた。僕はばあちゃんと仲良く二人で食べた。ごちそうさま。
*先生からの一言
落とし物は警察に届けましよう。
4月24日
今日は朝から雪だった。近くのお地蔵様の頭に雪が積もっていたので、僕は帽子を買いに行って、かぶせた。その夜、僕は家の前にお米とか野菜なんか一杯食べ物があったので、この前、先生に言われた通り、警察に届けた。
*先生からの一言
そうですね。落とし主が現れなかったら、腐った食べ物がかつひろくんのものになるよ。
注・食べ物など保存できないものの場合は警察で破棄してよい決まりになっています。
僕は日記を閉じた。
釈迦くんは網掛けの極太縄を抱えたまま、遠い目をしてつぶやいた。
「・・・かつひろくん、君、良く極楽に来られたね。地獄の役人も、君みたいな屁理屈をこねるやつはひきとりたくなかったのかな」
「失礼な。僕は環境保護もしたし、不当な転売で経済も回したよ。さあ、釈迦くん、縄は完成した?」
「ああ・・・これなら、地獄の全員がぶらさがっても、警察に届けられても切れないはずだ」
釈迦くんの手には、もはや、蜘蛛の糸の面影もない、直径30センチはあろうかという『極太ロープ』が握られていた。
「よし、投下!」
シュルシュルと地獄に落ちていく重厚な救い。
「カンダタ、今度は期待していいぞ。こっちはエラ呼吸の修行より、きびしい日記を聞き終えたんだからな」
完
花に一夜の宿はなくともー浅井長政伝
いつも私の拙い小説を読んでくださりありがとうございます。『ある薬師の一生』ある薬師の一生が100話を超えました。
また、戦国時代 敗者の言い分も完結しました。
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