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【第2章】 未来人、NFTで家族契約しようとしてさらに怒られる件

前回の会議で「育児DAO」を提案し、無事に怒られて帰った未来人(俺)は、なぜかまた市役所に呼び戻された。


「……なぜ俺を呼んだ」

「いや、あれからちょっと、保活スコア制度を見直そうって動きが出てきて……」

「それはいいですね。じゃあ今回は“家族制度”をハックしますか」

「今すぐ帰ってください」


止める間もなく、未来人はプロジェクターの前に立った。



「さて、今回のテーマは──家族契約です」

「不穏なワード来たな」

「現代では“家族=血縁+法律”で構成されていますね?でもこの構造、もう限界なんですよ」


俺はスライドを表示した。


【現代の家族構造】

・親が子を一方的に育てる

・家族内で役割が固定(母=育てる、父=稼ぐ 等)

・離婚・再婚で制度がバグる


「これを解決する手段、それがNFT契約による“家族プロトコル”です」

「はい出た!なんでもNFTにするやつだ!」

「NFTとは“Non-Fungible Ties”、つまり“唯一無二の関係性”です」

「今勝手に意味変えたよね!?」



俺は説明を続ける。


「たとえば──子どもが“育ててほしい条件”を提示し、大人側も“育てたい意志”を持って手を挙げる。

それをマッチングし、契約が成立すれば“家族NFT”が発行されます」

「出会い系かよ!」

「契約期間は3年。その間はお互いに関わり合い、再契約・解約も可能。

“義務としての家族”から、“選択する家族”への進化です」

「いや、進化の方向性おかしくない!?」



母親たちがざわつき始める。


「それって、“都合のいい関係”を正当化してるだけじゃん……」

「子どもが“いらない”って言ったら即解約される世界とか……怖くない?」

「……家族って、そんな取引的なもんじゃないでしょ」


その空気を切るように、未来人は静かに言った。


「でも、“取引的じゃない”家族の中で、いま多くの親が潰れてますよね」



沈黙。


「愛と犠牲が“契約外”で扱われると、人は燃え尽きるんです。

だからこそ、明示されたプロトコルとして、関係性を設計すべきなんです。

本当の愛は、“任意”であるべきだと、我々は考えました」



そのとき、若い父親が手を挙げた。


「……うち、息子に“お父さんなんていらない”って言われたことあります」

「それは辛いですね」

「でも、NFT契約だったら──って、ちょっとだけ思った。

“契約解除された”って言い訳があれば、俺ももうちょっと冷静に受け止められたかもなって」


その場に、妙な静けさが落ちた。


誰も爆笑していない。

でも誰も帰ろうとしていない。



俺は、最後のスライドを映す。


【問い】

家族とは、なぜ“自然発生”するものとして扱われているのか?


そして、静かに言った。


「制度は変わらないかもしれない。

でも、問いを持って家族を始める人が一人でもいれば、それで十分なんです」



俺はまた、怒られながら会議室を後にした。


帰り際、参加者のひとりが呟いた。


「……NFTとか意味わかんないけど、“選べる家族”って言葉だけ、ちょっと残ったわ」

【次回予告】


第3章:未来人、“育てられること”の意味を忘れた現代人にツッコむ件

育児制度を語るくせに、自分が“どう育てられたか”を忘れてる現代社会を、未来人が静かに爆破する回。

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