アルバターラの回想【6】
63
赤竜はカラセンの未踏の奥地に巣があるらしく増えてその巣から溢れた竜が人間の住んでいる地域に住み着こうと、しばしば生活圏に危害を与えてくるので定期的に狩らなくてはならない。
竜とて人間を狩りに来ているのだから、これは純粋に争いなのである。
まだ村からは遠いが目撃情報も多数上がってきたので今回もオーダーが入り、当然サイマー・ゲネトが仕切るパーティが行く事になった。
ラウルは将来、父サイマーとオーダーを争うパーティを作って競う事を夢見ていた。
その時にはマルジュ・ナージャを引き入れようと思っていた。
しかし今回マルジュの援護を命じられて士気がしぼみ、その気も失せている。
あんなめんどくさいヤツとなんか組むのはごめんだ
だいたいが親父とお袋とダハブおじさんが甘やかし過ぎなんだ
ダハブと両親の事情はラウルもスラジャも知っている。
まあ村中の人間が知っている。
サイマーがドゥクスになるのが遅れるほど当時両親は村人から総スカンを食った時期があったが結局は竜狩りを頼まねばならないのでスラジャが馬に乗れるようになる頃には誰も両親に絡む事は無くなった。
村の外れにひっそり住んでいたゲネト家族がドゥクスとして村の中央へ招き入れられて今に至る。
当時は厚く同情されていたダハブもマルジュを連れてきた辺りから薄くなり、今回の件で残りカスのような村人達の同情もすっかり無くなってしまってるようにラウルには見える。
サイマーもラダもそれを密かに喜んでいた。
ただ、ナージャ親子はそれに気がついていなかった。
そして赤竜狩りは最悪だった。
この悔いの残る記憶にアルバターラの顔が歪む。
もう40年余り前の事だが今でも戻れるなら戻りたい。
ダハブが赤竜を追い込みサイマーが迎え討つ流れになっていたがラウルは初めての赤竜に興奮し、手柄をはやっていたのだ。
ラウルには赤竜の逃げるルートが見えていた。
ルートで待ち構えるべくパーティを離れ岩場の陰で待機した。
ラウルはこの時完全にマルジュの援護など頭に無かった。
来た!
ラウルは鎖銛を構えてルートを塞いだ。
かこ⋯は⋯やいー!
サイマーがラウルに何か叫んでいた。
囲うのはまだ早い?
続けてサイマーが叫んでいる。
来るぞー!逃げる準備をしろー!
赤竜は行く手を塞がれたのを察知し、逃げ道を探した。
塞がれたのなら突破出来そうな穴を。
1番小さく弱そうな人間を。
見つけた!
逃げる赤竜が急に向きを変え追い込むダハブの方へ向かってきた。
包囲の穴、マルジュ目掛けて襲ってきたのだ。
ダハブは間一髪避けたがマルジュは竜とすれ違いざまに鋭い爪がマルジュの頬の肉を削いでいき、マルジュはその衝撃で馬から吹っ飛ばされて岩に叩きつけられた。
赤竜にはそのまま逃亡され狩りは失敗に終わった。




