アルバターラの回想【3】
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ここはカラセン地方のダマンテ村と呼ばれているが正式な名前は第22番草原という。
大粒のダマンテの採掘場に近い村だ。
勝手に村に滞在して採掘場からダマンテを掘り当てたとて、それはすぐに採掘権利者に没収され採掘者には一銭も入ってこない。
ましてや隠して第22番採掘場から持ち出せば犯罪者として何年も辛い穴掘りをさせられる。
その場合もちろん罪役なのだから給料など出ない。
こういったトラブルを防ぐためにカラセンにはギルドがある。
ギルドとは職業安定所と労働組合を兼ねた施設で地方内の採掘権利者、いわゆるオーナーがが運営している。
このオーナーがギルドに職を求めてくる人夫達をギルドのルールのもと、雇うのである。
ここ第22番採掘場のオーナーはサフラ・マーイという大地主で富豪である。
ダマンテ村から一帯の村々のギルドを営んでおり、マーイギルドと呼ばれている。
採掘人夫は雇われれば食事、寝床、採掘服、道具、怪我の治療などを保証される代わりに賃金は雀の涙。
腕力や体力が無い者が出来る仕事ではない。
であってもダマンテ他、金や宝石を掘り当てれば大きさによっては多額の手当てが支払われる。
5センチ角のダマンテ原石を持っていけば半年は遊んでに暮らせる手当てが入る。
かくしてダマンテ村は一攫千金の体力自慢が集う村となっていた。
マーイギルドの館には無料宿、無料レストラン、酒場、カジノも併設されておりオーナーのサフラは渡した手当ての回収に余念がない。
現在でもギルドの竜狩りのオーダーはサイマー・ゲネトの独占オーダーであるがもちろん、サイマー単独で出来る狩りではないので狩人を募ってパーティを作る。
それなりに支払われる高額な報酬もパーティ内で分けるので結果的には採掘で当てた人夫よりも低い収入になってしまうがサイマーはそのあたり無欲な人でパーティの要であるにも関わらずすっかり平等に報酬を分ける。
実は妻のラダもかつてはゲネトパーティの一人だった。
ラダは美しいと言えるがギルド一番、村一番とは言い難い普通の美人だ。
ドゥクスに選ばれるほどの英雄サイマーがラダを妻に選んだのはラダが思いやり深く、賢く、誇り高く、何よりパーティで心の絆が出来ていたためだ。
上辺だけ見てもラダの魅力は判らないだろう。
長男のラウルもラダの良さが判らない一人だ。
かっこいい竜狩り達人の父と、普段は穏やかで優しいがラウルが悪さをしたり喧嘩で負けて帰ってくるとなると額に角が生え口には牙が生え鉄拳制裁から始まりガミガミと説教する怖い女のどこが良いのか。
妹のスラジャも遠慮なく張り倒されているし普段の様子と憤怒の様子のギャップがさらに怖くてラウルもスラジャも母に逆らったりは出来なかった。
「誇りを持ちなさい」と必ずラダは言った。
「誇りを持って生きるには強くないといけない。自分の誇りにふさわしい強さを身につけなさい」
その当時は何のことか判らなくてただの母の口癖だと思っていたが母がどんな想いで何度も言っていたのか、解る気がする。
かつてラウルと呼ばれたアルバターラには苦い記憶。
あの頃スラジャが言っていた事がヒントになった。
女が誇りを持って生きるのは難しいわ
強い心を持っているつもりだけど、力が無いんだもの
そしてその当時の馬鹿な俺は妹の言い分に、なに拗ねてんだ、そんなどうしようも無い事をくだらねぇと思っていた。
ならば母の口癖は俺にだけ向けたものだったのか?
スラジャが俺に見せた誇りと強さは間違ったものだった。
ラオ、私の強さを見て!
スラジャは絶対に間違っていた。




