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レッキス!レッキス!  作者: 山本まぬ
2代目:小器の老王
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フェゴムーシュの回想【4】

 49

 悔しいがアンギャルカは天使の泉をとても気に入った。

 水辺まで青く静かな泉。

 人口的に造った泉なのだろうが、植物が覆って空気も水面も美しい。

 なんだか懐かしい気持ちさえする。

 サッドと結婚すればいつでもここに来れるのだ。

 サッドの仏頂面は気になるが、クレオパトーラを見て育ったのなら不器量な自分にもっと冷たいだろうと思っていたのにとても優しいし、毎日褒め言葉を口にしてくれる。

 慣習賛辞?

 それでかまやしないわ。


 アンギャルカ・マサリクが再びイオナンタの屋敷を訪れた時、楽しみにしていた泉に可愛らしい壁なしの四阿家(あづまや)が出来ていた。

 喜んだアンギャルカは、はしたなくも走り寄ってベンチに座って感激していた。


「あなたの為に造ったのだが、喜んで貰えただろうか?」

 振り向くとハイコ・イオナンタが居た。

 襲われる事は無いだろうがアンギャルカは1人で泉まで出歩いたのを後悔した。

 落ち着いて。落ち着いて。

「とても気に入りましたわ。でも許しもなく突然声をかけるなんて失礼じゃありません?」

「邪魔をするつもりは無い。だが、我との事を考えて欲しい。サッドよりも大切にする自信はあるのだ」

「サッド様は私を大切にしてくださってるので、ご心配なく。あらそうそう、ダフィネとのご婚約、おめでとうございます」

 ハイコは困った顔を隠そうともしなかった。

「サッドは・・・貴方を愛してはおらぬ」

「知ってるわよ!」

 アンギャルカはなぜこんな屈辱的な事を言われなくてはならないのか、カッとなって怒鳴ってしまった。

「次期当主になるために私と結婚するんでしょ? 愛されるとか関係ないのよね? 知ってるわよ! 貴方だって私に言いよって来るのは当主の座欲しさでしょ? 知ってるわよ!」


 ハイコは暫しジロジロと睨んだが何かを決めたようにアンギャルカを見据えて言った。

「やはり私の方が貴方の良さを理解している。正直に言うと貴方に惚れたわけではなかったのだが、今解った。貴方は素晴らしい」

 ではごゆっくりしていかれよとハイコは去っていった。


 賢いアンギャルカは全てをサッドに注進した。

「愛してない」のくだりは抜いて。

 サッドは相変わらずの無表情だがとても心配そうに言った。

「今度貴方が泉に行く時こっそり後を付いて行ってハイコが絡んでくる現場を押さえて諌めようぞ。アレは大人しい弟なのだが思い詰めると貴方の意に沿わぬ事をするかもしれぬ」

「そのようにお手を煩わせては」

「否。悪いのは弟なので貴方はそのまま麗しく過ごしておられよ」

 そして父ドラゴミールに相談しに行ったようだ。

 アンギャルカはサッドを頼もしく思えた反面、自由に泉に気軽に行けなくなってしまったので残念に思えた。


 次の日の夕方、泉でアンギャルカ・マサリクは冷たい遺体となって下令に発見された。


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