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レッキス!レッキス!  作者: 山本まぬ
2代目:小器の老王
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フェゴムーシュの回想【2】

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 イオナンタ家で絶大な発言権を持つクレオパトーラとて、悩みがないわけではない。

 夫のドラゴミールにはマリヤ・ケレスの年長の娘がいるが夫をせっついて自分の娘は無事に嫁がせ片付いた。

 嫁ぎ先は早い者勝ちだ。

 問題は息子たちである。

 サッドもハイコもなぜ揃いも揃って出来が悪いのか。

 マリヤ・ケレスの息子たちの方が歳は上とはいえ、明らかに優れている。

 ジャバは体格も性格も次期当主にするには申し分ない。

 ジャバ自身は当主になれない事を理解しており謙虚な振舞いは一族でも「聡い」と評価されている。

 いつも負け犬のマリヤ・ケレスが諦めきれないのも無理はない。


 比べて我が息子のサッドは自分が厳しく躾けたので振舞いこそ品があり若い事を差し引けばそこそこ恰好がつく。

 サッドは優雅な身のこなしだが現在のような乱世では(はなは)だ頼りなく見えてしまう。


 当主の座も誰かが用意してくれると思っており、積極的に行動しないくせに楽な方に流れる事には積極的なのである。


 ハイコに至ってはもう絶望的である。

 12人兄妹の末っ子なので適当に雇った養育係一家に任せきりだった為か、作法などはできているものの振舞いは優雅とは程遠い。

 同じ年頃の練習相手が居ないからか、武術も適当。

 成人の儀を終えて久しぶりに会ったが、母親の自分に思慕(しぼ)の情をまったく持っていなかった。

 完全に子育てに失敗してしまった。

 サッドを次期当主にするとして、後ろ盾になりうる嫁を用意するしかない。

 かくしてクレオパトーラは自分の親戚筋の豪族のマサリク家を口説き落としてマサリク当主の孫のアンギャルカ・マサリクとサッドの婚約を成立させた。

 この件では当のサッドも当主のドラゴミールも寝耳に水のクレオパトーラの独断であった。


 アンギャルカ・マサリクはまったく乗り気ではなかった。

 元領主の名家とはいえ、「元」であり領地も無ければ裕福でもない。

 ただの現領主の家来としか見えないし、押しの強い姑付きで未婚の義姉も3人残っているし、年上の義兄やその家族となんて付き合いにくい。

 近いうちに顔合わせに行かねばならないが気が重い事この上ない。

 それでも政略結婚に夢なぞ持つような蝶よ花よの育ちではない。

 マサリク家の未婚女子で一番年長のアンギャルカはよくよく立場を理解している。

「結婚はガチャなのよ。誰が悪いわけでもないの。強いて言えばガチャ運が悪い私が悪いのよね」

 そして次期当主の夫人としては自分は見栄えがしないのも理解している。

 低い鼻、小さい目、痩せて安産に見えない身体‥‥家柄が良いと言っても周りには家柄が良くて器量も良い娘はたくさんいる。

 アンギャルカ(天使)の名前はふさわしくないと家族からも言われているのだ。

 いったいなぜクレオパトーラ様は自分を推したのか判らなかった。


 当主ドラゴミールはこの電撃婚約に混乱していた。

 サッドの妻にはドラゴミールの恩師の孫のダフィネを(めあわ)せる事にしていた。

 ダフィネは家柄こそ普通だが品があり、控えめだが美しく、よく気つくという、女性の美徳を全て兼ね備えた娘で、無欲で温厚なサッドにぴったりだ。

 クレオパトーラにしてもダフィネを気に入っていて将来はサッドにと言っていたはずなのに。

 アンギャルカ・マサリクも悪くはないが、ダフィネと家柄の格差がありすぎてダフィネを準夫人にするには無理がある。

 準夫人は夫人と張り合える家の娘でなければならないからだ。

 恩師がイオナンタに嫁がせるために手塩にかけて育てたダフィネを妾になどと言えないし、独身なのは末っ子のハイコしかいない。

 年下のハイコで恩師やダフィネは承知するだろうか。


 今回の事でドラゴミールはクレオパトーラの事後報告の暴挙に腹を立てていた。

 と、言ってもドラゴミールはクレオパトーラに何も言うつもりはない。

 政略結婚で娶ったクレオパトーラとマリヤだが、ドラゴミールは昔からクレオパトーラに恋をしていて現在も愛している。

 惚れた弱みなのだ。


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