アドナルの呪い
38
リッテルメレだけ名指ししなかった王。
死が迫ったそのときにバジルーを殺す呪いをレギオ5名を生かす事に使ってしまった王。
貴方は本当に複雑な方だった。
エイブルニアは最期までイーライを理解しきれなかった事で胸が痛んだ。
王の呪いの詠唱の間、角を握りしめブルブルと震えていたバジルーは呪う半ばで力尽きたのを見て小躍りした。
「わぁお! 力が、不思議な魔力が身体に満ち溢れてきたぞ。これが、これが王の力!」
バジルーは押し寄せる満足感で涎を垂らしてウットリしている。
白い光のアドナルは憤怒のために光に赤みを帯びていた。
もう一歩バジルーに近づいた。
バジルーは角をかざして身構えた。
「おっと、角どころか生身も無ぇ幽霊さんよ。王の力を舐めてもらっちゃ困るぜぇ」
バジルーの背にまるで翼のように炎が集まり燃え上がった。
十分に大きくなった炎が音速の勢いでアドナルめがけて飛んで行き、アドナルは瞬く間に炎に包まれた。
しかし、白い光がサッと走った瞬間、あっけなく鎮火しアドナルは輝きを増した。
戦闘態勢だ。
ふん、お師匠様の足元にも及ばぬ
この程度が王の力とは笑わせる!
気が大きくなっていたバジルーは怯んで後ずさりをした。
本来臆病な器の小さい男なのだが現在はれっきとした大陸の支配者である。
角を持っているのだからこんな幽霊に何が出来るというのか。
あさましくも魂魄の身なれどお前などに遅れは取らぬ
なぜだかわかるかえ?
さかしまの忌みを背負って生まれ、運命を! 世界を! この世の何もかもを恨み憎み!
憎み抜いて呪って生きて死んだ
今また、わたくしの唯一の光、わたくしのご主人様の命を奪われて
角を持たぬ、身体を持たぬ、それくらいのことでわたくしの呪いは微塵も薄まらぬわ!
アドナルの魂を燃やし尽くす呪いの詠唱が始まった。
この世のあらゆる忌み物よ
わたくしに集まってその力を預けよ
その汚穢をこの男に向けよ
内も外も深く深く沁みて行け
アドナルに黒い靄が集まって来ている。
わたくしの光、わたくしの貴い想い
おのれおのれぇ
イーライ様を失ったわたくしの恨みをみよ
どれだけの事が出来るのか、思い知れ
黒い靄が逆巻き、バジルーに浴びせているが、ベオアルコンの角はよく受けていた。
あの濃くて重い呪いを吸い取っている。
呪われろ! バジルー!
お前が憎い! 憎い!憎い!
角が吸収しているとしても、バジルーは押しつぶされそうになり、吐瀉物を撒き散らしていた。
角も無い身で、なんと強力な呪いだろうか。
アドナルは魂を燃やして呪いをかけている。
とうとう角が溶け出してきた。
アドナルの人型の魂のあちこちから眩い光が放たれていく。
ベオアルコンの角はどんどん細く小さくなってゆき、尽きようとしているようだ。
「あわわわ! やめろぉ! この死に損ないめ! 」
イーライ様ぁ
うおおぉぉぉぉぉぉー!
おおおぉぉぉー
おおおぉぉぉー
パシィッ!
アドナルは消滅した。
同時に角も溶け尽きたのを見た。




