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レッキス!レッキス!  作者: 山本まぬ
最初の王:呪い王
34/70

リッテのコンプレックス

 33

 サピエンマーレはオランジャが満足できるような回答が出来るのか試されているような気がして困ってしまった。

 そもそもオランジャを納得させる義理はない。

 ここは正直に思ったことを言うべきだ。


「イブリンは確かに気が強くて厳格でしかも質が悪いほど口達者だ。王を除けば貴方に限らず誰も勝てないから、勝気な貴方がイブリンを疎ましく思うのは自然のことだし、誰も(とが)めない。アルバターラなんかはむしろ面白がってるよ。アルバターラは王からイブリンの方が格上って言い渡されて少しの間落ち込んでたし。つまり何が言いたいかというと、良い人だと思っちゃいるけどイブリン程度になると誰でも嫉妬するし比較したら自己嫌悪になっちゃうってこと。むしろ判り易く反発するくらい貴方(あなた)は張り合えてるんだからレベル高いほうだと思うよ」


 オランジャは真顔になって少しの沈黙の後、

「ありがとう。少し頭がすっきりしたわ」


 その後の吉日の夜にフェゴムーシュ帰還の慰労会と称してレギオ6名が集まった。

 初めて参加のオランジャも愛息子ベオアルコンをサンドラに託して蜜酒は我慢してイチゴ水と料理を楽しみ、太陽のような眩しい笑顔である。

 オランジャがあまり息子と離れたくない事もあり、王の居住区の1階の召使い用の食堂に場所を設えている。

 居住区の料理は執務区の(まかな)い用の厨房とは料理の質や量とも段違いであるし、召使いたちの食堂には王が近づくはずもないからだ。


 リッテルメレは大人しく他の仲間を観察していた。

 ずっと助手として一緒にいる上司ともいえるサピエンマーレ以外はあまり知らないのだ。

 お互いあまり知らないのは全員そうなのだが自分以外のレギオは立場の特殊性からか、人間関係というものをはき違えているように思う。

 犬猿の仲と思われていたイブリンとオランジャの談笑をこうして見ていれば建前なのか表向きなのかはたまた真実なのか非常に仲良く見える。

 オランジャの懐いた態度やイブリンの愛するものに向ける眼差しに嘘があるとは到底思えないが、真実親しい仲とも到底思えない。


 アルバターラは少し飲みすぎではないだろうか?

 アルバターラは明らかに王に気に入られようとしているがサピエンマーレやフェゴムーシュは王に仕えるというより、与えられた仕事に意識が向いているようだ。

 3人とも王が怖くないのだろうか?

 僕は怖い。

 ゆえに僕の「対象物の時間を少し止められる特殊能力」を王に伝えられずにいる。

 伝えたら目を掛けてもらえるだろうか?

 (うと)まれるだろうか?


 王の目に留まり有利に生きる事は大きな賭けで、僕にはその勇気はない。

 だが、他のレギオは賭けに負ける事を恐れず自身の道を迷わず進んでいるように見えてならない。

 命を惜しがってビクビクしている僕とは違い、持てる能力を恐れず振るって生きている。

 そしてそれが王からの待遇に出る。

 実質王妃のイブリンは別格としてもオランジャ妃や側近のアルバターラは間違いなく裕福で贅沢を許されている。


 サピエンも研究の為に書籍や素材購入でかなりの出費をしているので質素に見えるが王に成果を売り込み予算をせしめている。


 フェゴは地方を搾り上げ金集めをしているので誤魔化(ごまか)して(ふところ)に入れる事を王は考慮しての手当だった時は非常に困窮していて壊れた靴をいつまでも直していたっけ。

 王から絶大な信用を得た後は馬を5頭、馬の世話係5名、手当は倍増の破格な報酬となった。


 名づけを受けたのもフェゴの少し後くらいだから僕が取り残されているのは間違いない。

 故郷オーセンに居たころは神童よ、オーセンの誇りよと言われていたが、現実はこんなもの。

 いつか僕も迷いない行動に出ることができるだろうか?

 いや、僕だって絶好の機会を掴めば必ず賭けに出る。


 人知れず意気込んでいたリッテルメレは憂を吹き飛ばすべくワインの杯を空けた。


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