角の秘密、再び
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北の塔に監禁されていたサピエンマーレが自室がある王宮南側に帰ってきた。
サピエンマーレもオランジャと同じく一時的に休暇で帰って来たがまた北の塔に戻って研究を続けることにした。
サピエンマーレ自身は研究を終わらせていない事で塔に帰ると決めたのだった。
今はレギオの身体は頑丈なのを良いことに今までの拘束と無理なスケジュールでの研究で疲労困憊したサピエンマーレは身体を癒している最中なのである。
サピエンマーレの生還で派手にはしゃいで喜ぶと思われたアルバターラは意外と静かなものだった。
アルバターラはフェゴムーシュがセンクィーに帰ってきたら6名で集まろうと提案した。
王に隠す必要がなくなったことで遠慮なく客室の食堂が使えるので狭いエイブルニアの書斎で梯子に座る必要が無くなった。
オランジャの子供のお披露目を兼ねてと思っていたがオランジャが承知しなかった。
母のオランジャは、可愛すぎて他人に見せるのが勿体ないのだと言っていたが、忌み子であるのを皆知っているとはいえお披露目する気にもなれないのだろう。
その代わりオランジャ自慢の女中のレキサンドラをお給仕に貸すと言った。
ただ、その提案はレキサンドラにキッパリ拒否された。
「ご主人様、わたくしはご主人様に憂いなく宴を楽しんでいただくためにベオアルコン様をこちらでお世話いたしますので」
サンドラは本当に悪くない女中である。
サピエンマーレは回復して研究室に戻った時、少し違和感を感じた。
誰かが書類を動かした形跡があった。
王から預かった黒竜の角は本をくり抜いた中に隠していたがこちらは無事だった。
サピエンマーレは王に報告せねばならないと思った。
「王、私の不在に塔の研究室に入られましたか?」
王は興味なさそうに魔術書を読んでいた。
「否。整理できていない書斎ほど余が嫌いなものはない」
「畏れながら申し上げます。何者かが私の草稿を探った形跡がございます。しかも探った事を隠そうとした細工が見られます」
王は読んでいた書をテーブルに置いてサピエンマーレに向き合った。
「角は?」
あの草稿を読んだ者ならば例の黒い角がどれだけ重要な物かが解ってしまう。
読まれたなら角を手に入れようとするだろう。
研究室に隅々まで捜索したような形跡は無かったが、もうあの部屋には置いておけない。
「角は無事です。が、もうお預かり出来ませんのでお返し致します」
サピエンマーレは大事に両手を添えて角を王に差し出した。
王は角を手に取り様々な角度で眺めまわしてから懐に入れた。
「確かに返してもらったぞ。これも他の角と同じように置き場所を変える。何か変わったことがあればすぐに申せ。リッテルメレを使って良いぞ」
「御意にございます」
角を返却すれば研究が捗りにくくなるので王に角を渡すのは躊躇われたサピエンマーレだが、返してしまった今は大きな荷を降ろして金庫に仕舞って鍵をかけたような安堵感を覚えた。
研究に打ち込むやる気が湧いてきた。




