フェゴの歓迎会[1]
13
王の居住区の出入りを禁じられたレギオのエイブルニア、アルバターラ、リッテルメレは居住区内に囚われているであろうサピエンマーレと接触を図るべく動いていた。
リッテルメレが凡その居場所を探ってきた。
入り口から遠い北の塔部分で目撃したという情報の裏を取ってきたのだ。
入り口からまっすぐ北塔まで大廊下を通って行くのは無理である。
監視が多すぎる。
エイブルニアは監視の厚さ薄さを探るべくオランジャの盛大なお祝いのピニャータに紛れて侵入したのであるがどうにもオランジャ自身も微妙な立場に立たされている事が判った。
居住区の南の入り口からすぐに左に折れて細い通路の先にオランジャの部屋があるがそこまでは見張りは驚くほど手薄なのでリッテルメレを連れてくれば身重のオランジャを連れ出し、元の私室に戻せそうである。
昨日オランジャが倒れた時、落ち着かせるためにエイブルニアは自身がオランジャを殺してあげると言ったが、バジルーはともかくオランジャもレギオの一人である。
エイブルニアが手をかけても殺すことは難しいだろう。
試したことはないがレギオを殺せるのは王だけであろうと思われる。
エイブルニアはオランジャを殺す気はさらさら無かった。
むしろ何とか王の手から救いたいと考えている。
レギオ一古株のエイブルニアだがレギオ同士の交流は少ない。
何人いるのか、現レギオ全員見知っているのは王側近のアルバターラだけである。
地方に散らばっている富豪の財を取り上げかき集めて建てられた巨大な王宮がある、王都センクィーにフェゴムーシュが帰ってきた。
地方に視察に回って税を王都に集めているので王都センクィーは裕福な都市である。
フェゴムーシュが「視察」を担当しているのは馬上活動に強い事と冷静で確実な取り立てを行うからである。
フェゴムーシュは元はザナルセン地方の貴族階級で騎士の職にいたため乗馬にたけており、護衛も必要のない自衛力、機動力、身のこなし、任務遂行への集中力はアルバターラをも唸らせる。
融通が利かない所はアルバターラがフォローすれば良いコンビだ。
アルバターラとリッテルメレはフェゴムーシュを伴ってエイブルニアの書斎に集まった。
レギオ4名での食事は初めてだ。
王はレギオ同士を仲たがいさせる事を好むし、幾人かは王に始末されたり、いつの間にか知らないレギオがいたりするからだ。
今夜もエイブルニアが食卓を用意した。
厨房に特別な物を頼むと王に怪しまれるのでエイブルニアは女奴隷と悪戦苦闘で用意した燻製と自室のストーブで煮込んだ牛乳とチーズ入りの魚のチャウダー、オランジャが忠実な女中のレキサンドラに命じて用意させたごちそうとピニャータを幾つかくすねて菓子や高価な香辛料を調達できた。
王宮外の森で仕留めたイノシシの肉の煮込み、糸を付けた矢で射って漁ってきた魚の燻製料理も並べた。
パン籠にクビ高の燭台と同じ高さまで積んだパンを2籠。
前回、身体の大きいアルバターラが大食いで少し量が足らなかった反省から、料理をタップリ用意したのだ。
今夜は運動量の多いフェゴムーシュも居るので多すぎるくらいで良い。
フェゴムーシュがエイブルニアに睨みつけながら言った。
「センクィーに帰った夜にこんな豪華な食事が出来るとはうれしい限りだ。遠慮なくごちそうになるぞ。」
フェゴムーシュはいつもこんな感じで目つきが悪く無表情なのが通常らしい。
陽気で表情豊かで愛想の良いアルバターラとは正反対だ。
ザナルセン出身のフェゴムーシュばアルバターラほどではないが色黒で栗色の髪に茶色い瞳の剣の達人である。
地方に視察に行った際は望めば山海珍味に美酒に枕女付きで歓待されるだろうが、生真面目なフェゴムーシュは一切の賄賂接待を拒否しているので地方では嫌われている。
しかも視察官は宿泊費も食費も支払わないので宿屋でもあまり良い食事は出てこない。
視察中はストイックな生活を貫いている筋金入りの仕事第一主義者なのである。
アルバターラは好みのワインをしっかり傍に寄せて確保しながらフェゴムーシュに言った。
「サピエンも揃っていたらもっと楽しめるんだが、こんな事態にならないとイブリンもこんな宴会を用意してくれないだろうな。イブリンはフェゴに色々協力を頼みたいんだそうだ」
フェゴムーシュはギロリとエイブルニアを睨んだ。
「うむ、美しい!」
表情は凶悪だがフェゴムーシュはエイブルニアを嫌ってはいないようだ。
アルバターラも最初はエイブルニアを気に入らないと思っていたが今ではかなり信頼を置いている。




