不安なオランジャ[2]
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なぜ今まで気が付かなかったのか。
同じ場所に居るはずなのになぜ王と会わないのか。
誰か私に会いに来て!
この子が産まれるまで一人でいるなんて耐えられない。
オランジャ妃の懐妊で妃達はそれぞれ祝いのピニャータを用意していた。
エイブルニアもオランジャへのピニャータと、王からオランジャへの分も用意している。
王からのピニャータの中身は豪華でなければならない。
王宮の食費約10日分もの予算が充てられエイブルニアはため息が漏れた。
懐妊祝いの大量のピニャータは奴隷たちによってオランジャの部屋や廊下に吊るされ壮観である。
廊下まで見に行ってはみたが、オランジャは孤独で不安でとてもピニャータを割って中身を見て喜ぶという心境になれなかった。
部屋に帰ると大きなピニャータが1つ割れており、鏡台の椅子に女が腰かけていた。
「イーブリン!」
エイブルニアは赤い唇に指をたてた。
「しぃっ! すぐに出ていくから騒がないで」
だがオランジャの口から出たのは情けない言葉だった。
「出ていかないで! ここにいてよ。イブリン!」
エイブルニアが、はぁ? という顔をした。
オランジャは女中以外はここに誰も居ず、今の自分の状況もわからなくて恐ろしくてもう我慢できない事をエイブルニアに訴えた。
王妃になるとかイブリンに勝つとかもうどうでも良かった。
どう考えてもレギオの中で現在一番頼りになるのはイブリンだ。
オランジャは無事に子供を出産する事以外もう何も望まない。
エイブルニアはパニックを起こしてしがみついてくるオランジャに困惑した。
えええぇぇぇ??
ここにはサピエンマーレに会いに来ただけで馬糞女のピニャータに乗っかっただけだったのだ。
しかし妊婦を蹴り飛ばして部屋を出ていく訳にはいかないようだ。
「落ち着いて。馬糞・・オランジャ? 王はここには居ないんだな?」
「王だけじゃなくてサピエンもリッテも会ってないのよ。それから泣きそうなんだから馬糞はやめてよ」
オランジャの色素の薄い顔が真っ赤だ。
とにかく落ち着かせるためにピニャータをいくつか割って菓子を見つけてお茶を入れてみた。
馬糞女がベルを鳴らさない限り女中も来ないなら急いで出ていく必要もなさそうだ。
オランジャはもうひとつきも王に会っていなかった。
エイブルニアは王座の間でピニャータを作るよう王に直接命じられたのは4日前だ。
王はサピエンマーレに居住区で仕事をさせていると言っていたので王もサピエンマーレも居住区に居るのは間違いない。
居住区の入り口や廊下には多数の見張りがおり、王に気づかれずに侵入するのは困難だ。
それなのにオランジャのいる場所には女中こそ呼べるが侍女もいない。
オランジャは現在地を把握していない。
が、エイブルニアはこの場所が入り口近くの廊下から西に外れた細い廊下の先にある一画で王のいる場所からかなりの外れにあると判っていた。
憐れ、オランジャは軟禁されているのだ。




