①AIIBSOの裏の顔に存在する組織!?
ジェイムズが、AIIBSOのシンガポール支部から戻ってきてから約1週間が経った。
そんな中、フィラデルフィアは日もすっかり落ち、月と建物が赤く染まった夜になっていた。AIIBSOの本部のメインビルの向かい側には、6階建ての灰色のビルがある。そこにはジェイムズと『その弟』の家、名は『アダソンブラザーズタワー』だ。 ここには、『アダソン兄弟』と担当使用人構成員しか入れず、担当使用人構成員は3年毎に転勤することになっている。また、専用のパスがないと絶対に入ることはできないため、セキュリティーは万全だ。他の構成員には、中がどんな作りになっているのかは、トップシークレットとされている。
ジェイムズは、この日の業務を終え、この建物の6階にある広々としたリビングにいた。そこで、自分のフランス製の折り畳み式の剣のメンテナンスをしながら、人工知能の声と話していた。
「ジェイムズ、シンガポールはどうでしたか?」
「とてもきれいで、穏やかな国だった。しかし、計画はまたもや失敗した。『あの邪魔者5人』のせいで。」
「それは、残念でしたね。久しぶりに『弟の工場組織』に行ってみてはどうですか?」
「ロンドンにいる『弟』の組織へ?」
「そうです。今度は『弟』と協力してISDCを乗っ取りに行くのです。」
「言われてみれば、ここ半年くらいの間『弟』と『弟の日本人の助手側近』と会ってもいなかったからそれもいいかもしれないな。まずは、『弟』と『弟の日本人の助手側近』に会いに行くとするか。」
そしてジェイムズは『アダソン兄弟』の使用人の最高責任者であるアリー・グランデとアンドレア・バーネスの2人を呼んだ。
「私は、『弟』の所に行くことにした。そちらは行く準備をしてくれ。また、明日ここにいる構成員に私は、しばらく留守にするということを伝えてくれ。君たちには私が行く準備の手伝いをしてくれ。私は今すぐ行く。」
「了解しました。」
それが終わると次にジェイムズは、メンテナンスし終えたばかりの剣を持った後に、エレベーターで3階へと向かった。そのある所には、クリーニング施設とスーツとマント保管庫があり、その前が、カウンターになっていた。そこにいるスーツ受け渡し部の使用人構成員にジェイムズは、次のことをお願いした。またその構成員は、英語が話せる日本人女性だった。
「マントの準備をしてくれ。」
「かしこまりました。クリーニング済みです。」
その構成員は、ジェイムズに皺一つ無い光沢のあるシルク素材で作られた高級そうな黒いマントを畳まれている状態で渡した。ジェイムズは、隣の更衣室に行き、そこある大な鏡の前で、床に付くくらいの黒いマントの紐を結び、着た。そして、カウンターに戻った。
「問題ないですか?」
「大丈夫だ。新品同様、きれいにしてくれてありがとう。」
「それが、ジェイムズの本当の姿ですからね。」
「それでは、行って来ます。」
「気を付けて行ってらっしゃいませ。」
ジェイムズは、エレベーターで1階へ向かい玄関の外の階段を降りて地下広場へ行った。そして、自分のマントで身を潜めて辺りが光りだして消えたのである。そう。英国支部でもあり、裏組織でもある『弟』と『弟の日本人の助手側近』の所へワープしたのだ。