①紀ノ松と東崎
それから数分後、紀ノ松はアメリカンギャングボーイに戻り、ヨインターと新板がいる麻薬倉庫へ向かっている最中だった。そうしている中、紀ノ松は2年前にアメリカンギャングボーイに潜入していたことを思い出しながら『ある事』が気になっていた。それは、
「あの2年前マックの横にいたマックの助手側近の東崎 南という日本人女性は、マックの企みである世界を麻薬化社会にし、人類を麻痺させ世界征服することには反対そうな感じがしていた。でも何でマックに付いているんだろう?彼女に直接合って話せば心が通じ合うかもしれない。でも彼女はどこにいるんだろう・・・。」
と紀ノ松は心の中で考えながらあるいていると、目の前に壁に埋め込まれた黒いハートが描かれたピンク色のドアを見つけた。そのドアには英語で、『助手側近室』と書かれてあった。紀ノ松は、そのドアの前に行き彼女がそのドアの向こうにいるのではないかと考えた。
一旦変装を解除し念の為レーザー光線銃を構えてノックなしにドアを高速で開けて
「動くな!」
と言って入った。
その瞬間、東崎は慌てて
「撃たないで!まさかあなたは、2年前にジェイムズと戦っていた人?何で、また侵入しているの?勝手に入って来るなんて!」
と両手を挙げながら言った。
「まずは、落ち着いてくれ!撃つつもりはない!君のことが気になって入ってきた。いきなり入ってきて申し訳ない。」
紀ノ松は、レーザー光線銃を下ろしながら言った。
東崎の足元には、マックによって破かれてしまった東崎の大切な人々の写真が散乱していた。
「わかったわ。何か用?」
「僕は、君を救いに来た。僕が2年前にここに来た時、マックが世界を麻薬化社会にし、人類を麻痺させ世界征服することを僕だけではなく、君もマックの横で聞いていたと思う。でも君はその時そのマックの企みを嫌だと思うような顔をしていたことを僕は覚えている。どうして、マック側にいるの?」
「私は幼い頃から、世界を見ることが好きで将来は海外で外国人と関わる仕事をしたいと考えていたの。英語塾にも通って、英検も取り、英語が社会に通用するほど英語が話せるようになった。マック博士は、知っての通り世界中のテレビにも出演し、大学の非常勤講師や画家活動などもしているほど世界中で誰もが知る存在の優秀な麻薬学者。私が高校時代に日本のテレビでマック博士が出演しているのを見たのがきっかけで、私は将来マック博士のような麻薬学者になりたいと憧れていた。そして、アメリカンギャングボーイに就職し、マック博士の助手となって共に働くようになって、私はマック博士と共に結婚の約束もした。しかし、私はアメリカンギャングボーイに就職するまではマック博士が『あんな恐ろしい計画』を考えている悪のエリート科学者とは知らなかった。この場所は、グリーンパークと『バッキンガム宮殿』の近くにある。マック博士の『あんな恐ろしい計画』が実行されてしまえば、私はマック博士と結婚できる。しかしそうなれば、マック博士は『麻薬王』なると共に『チャールズ国王』から王の座を奪い、王宮も『バッキンガム宮殿』からこの場所に移動させようとしている。また、『バッキンガム宮殿』も取り壊され、王室名も『英王室』から『麻薬王室』に変わることになってしまう。つまり、マック博士によって世界征服がされてしまうことになり、そんなことが起きれば、世界がきっと大きく変わって大変なことに・・・。だからお願い!マック博士の『こんな恐ろしい世界に変える計画』を止めてもらいたいの!」
東崎は、泣きそうな声で言った。
「わかった。僕も最初ここに初めて潜入するまではマックが悪のエリート科学者とは思わなかったから気持ちはわかる。世界がそんな恐ろしいことになるとは。そんな恐ろしい未来には僕もしたくない!そういえば、君や僕の足元には、破かれた写真が散乱しているけどこれはどうしたの?」
「私はマック博士に何度も、麻薬技術を悪用して麻薬を世界中に広げる『あんな恐ろしい計画』を実行してほしくないと言ってきた。そして私にはこれまでの人生で自分の家族や友人、英語塾の先生など大切な人たちがたくさんいる。『あんな恐ろしい計画』を実行するのであれば、私はいつもマック博士にその人達にだけは手を出さないようにとお願いをしているの。でもマック博士は『私とその大切な人々のどっちが大事だ?世私が麻薬王になるまでに、その人たちを忘れるように!どれだけ私が南君のことを心配しているのかわかっているのか!』や、『悪』を成功させるためにやっている!麻薬王にならないとその権利を示すことができない!』などと麻薬効果で興奮してまるで別人のような態度で怒鳴ってきて、私の気持ちをわかってくれない。マック博士が、麻薬服用後に私が私の気持ちを言うと、必ずそうなってしまう。さっきもこのように、私の大切な人々との写真を全て乱暴に破かれてしまったの。マック博士も私のことを心から愛してくれているけど、以前マック博士は、私のスマホを無理やりマック博士にしか連絡できないようにされてしまった。私が岡山の実家に帰る時は必ず、時差や私が何をしていようと関係なくマック博士から1日1回必ず電話がかかってきて必ずマック博士に電話しないとマック博士は怒ってしまうの。電源も切りたいけどマック博士が電源切られないように改造されてしまった。実家帰っても寝る時以外は必ずこのスーツ以外着用禁止と言われてしまっている。私も心からマック博士のことが好きだけど、これ以上、マック博士に止めるようお願いしたらマック博士が私に何をやらかすか怖くて、怖くて、どうしていいのかわからない。マック博士に憧れて心から愛し幸せに結婚したいだけなのに、こんなはずではなかった・・・。」
と東崎はとうとう泣きながら、自分のスマホを紀ノ松に見せて言った。紀ノ松がそのスマホを見ると連絡帳には全て英語でマックしかなく、東崎南さんの大切な人々の名前は1つもなかった。
「君にそんな事があったのか。連絡もマックにしかできないようにされてしまったり、写真を破かれてしまったり、服を制限されるなどとこれはひどいな。いくら何でもやりすぎだ!こんなの愛じゃない!これは束縛が酷すぎるDV被害だ!」
「DV被害?」
「君の今の状況を見る限りでは、DVが起きている。」
「そう言われると、やっぱりマック博士は幼い頃見ていた『不思議の国のアリス』の本の見過ぎでハートの女王に取り憑かれていて、ハートの女王になろうとしているのかもしれない。マック博士はハートの女王が本当にいることを信じてしまっている。いったい私はこれからどうすればいいの?」
「僕と一緒に、ここから脱出しよう。君を自由にしてあげる。マックから一緒に逃げよう。安全な場所に君をしばらくの間避難させる。でも僕はまだ仕事が残っているから行かないといけない。僕はマックがその計画を実行させないようここを壊滅しに2年前同様ここに来ている。だから、それが終わるまでここで待っていてくれ。終わったら、再びここに来る。」
「ありがとう。」
紀ノ松は、出ていった。だが、東崎は紀ノ松が来る前にヨインター、新板、紀ノ松が紛れ込んでいることを自分のパソコンに入っているジェイムズが開発したセキュリティーソフトで知ってしまっていたのだ。アダソン兄弟に報告しに行くかどうかと考えていた所に紀ノ松がちょうど入ってきたのだ。紀ノ松が再びここに来て一緒に逃げれば、自分は自由になれる。しかし、逃げてしまえば、マックが連れ戻しに来たり、自分にもっと酷いことをされたり、さらに何か恐ろしいことをやらかすに違いないと思っていた。そして東崎は、マックは悪いところばかりじゃないし、自分を必要としているとも思っていた。そのため、東崎は紀ノ松かマックのどちらの言うことを聞けば良いか迷いが生じていた。果たして東崎は、どちらの言うことを聞くことにしたのか・・・?