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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ラストオーダー

作者: 鯵のNo.付け

 Aの隣の席に転校生のBが座って以来、AとBは長年の付き合いとなった。

「Bは大人なったら何になりたいとかあるん?」

「将来の夢か~。特に決まってないけど、Aはあるのか?」


「俺は料理人なりたいねん。特に中華調理やな。」

「凄いね。家でも結構作ったりするのか?」

「焼き飯・餃子とかよう作るで。今はエビチリに挑戦してるけど、なかなかうまい事いかんな。エビチリ作れるようなったらBも家に食いに来てや!」

「それは楽しみだね。でも、僕はどんなに美味しくエビチリを作ってくれても残念ながら食べられない。」

「え、何でなん?その言い方からしたエビチリが嫌いとはちゃうみたいやけど……」

「昔、海老アレルギーと医者に診断された。」

「それは残念やな。ほんなら、そのうち絶品の回鍋肉食わしたるわ!」

「おっ!早くAの作る回鍋肉が食べたくなってきたよ。」



 40年以上の歳月が流れて彼らは社会人になっていた。

 Aは定員20名程の中華料理店を一軒構えるようになった。

 Bはそこそこ名のある企業の役員となった。

「ここのはどれも美味しいから、注文するのに毎回悩むよ。」

「そない言うてくれたら嬉しいわ。ゆっくり決めたらええがな。」

Aが出店してから、Bはいつも同じ席で美味そうに食事をしていた。


 数年経ち、スマートフォンと呼ばれる便利な物が普及して相当なる情報量の世の中となった。SNS上でAの店も評判上がり、Aの店は繁盛していた。

常時片手にスマートフォン操作、多くの人がこの体勢となった。Bも例外ではなかった。

「あ、Bいらっしゃい!今日はええ豚入ってんで。オイスターソースで炒めよか?」

「そう、それ貰うかな。それから白酒、ロックで」

Bはスマートフォンを見ながら店に入り、度数の高い白酒を飲み始めた。

「へい、お待ち!」

スマートフォン片手にBは料理に箸を突き始めた。

「B、どないや?こないええ豚滅多に入らんで!」

「うん、凄く美味しいね。」

「………」

 Bは片手にスマートフォンを持ち、もう片方の手で箸かグラスを持つ。この日は入店してからAの顔も料理にも一度も目を向けていない。

暫くしてBがフラフラし始めた。料理の皿の横に額を付け、動かなくなった。

「酒そんな強ないのに度数高いん飲むから、また寝てもたんちゃうん?」

Bが下戸な事は常連客の間でも有名であった。

「明日はB休みやから寝かしとくわ。」

 AはBを閉店後もそのままそっとしてあげた。


 Bがやっと起きた。

 片手にスマートフォン握りしめたままである。Bが早速スマートフォンを操作するが、電波が繋がらない。

「この店で圏外になった事はないのに……Aはどこに行った?」

 電波が繋がる訳がない。それは、Bが居る場所は永遠に圏外であるから。

 Bが食事中であった皿には海老の尻尾が残っていた。

 数日後、Aの店には保健所と警察が捜査に入り、閉業した。




料理は五感で楽しむもの。

料理を見ぬ食事は勿体ない。

アレルギーを侮るなかれ、一歩間違えば命取り。

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